2.Poor

可哀想に…
事故ですって?
しかもお二人とも…

人前に出れば憐みの目で見られた。
両親が交通事故でこの世を去って以来、事あるごとにそう見られていた。
だが、人の記憶とは流動的なものだ。月日が経つうちにあの事故の事もいつしか人々の記憶から薄らぎ、トニーも憐みの目で見られることもなくなっていった。

ラボで実験中、壁に激突し骨折したトニーは、病院のベッドの上で両親の死んだ時のことを不意に思い出した。ぼんやりしている隙に、荷物を取りに行っていたペッパーが戻って来たらしい。腕を突かれたトニーはベッドの上で飛び上がった。
「私は可哀想な人間なのか?」
「どうしたの?急に?」
トニーが突拍子もないことを言い始めるのはいつもの事だが、何が可哀想なのかさっぱり分からないペッパーは小首を傾げた。
「私は可哀想な人間に見えるかと聞いているんだ。親父とお袋が死んだ後、いつも言われていた。『可哀想』だとか『気の毒だ』とか…。私自身、そういう風に思ったことは一度もない。だが、最近思うんだ。すべてが突然すぎた。何もかもがな…。だから可哀想に見えたのだろうと思う。もし、あのまま壁にぶつかって死んでいたら、今度は君が可哀想だと言われるんだろ?君をそういう風に思わせたくない。つまり、その…あれだ。今度から気を付ける。すまなかった」
途中から話が変わっていた気がするが、今回の怪我の事を申し訳なく思っているということだろう。
大きく頷いたペッパーはトニーの髪を梳きながら
「そうよ、お願いだから私を『可哀想な未亡人』にしないでね」
と言うと、額に軽く口づけした。

拍手お礼再掲。The Pepperony 100 Challengeより

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