『天才・金持ち・プレイボーイ』
トニー・スタークの代名詞とも言えること言葉に釣られ、今まで何人…いや、何百人の女性が彼と一夜を共にしただろうか。
だが、トニー・スタークにとって、彼女たちは所詮その場だけの戯れでしかなかった。それ故に、情事は覚えていても、彼女たちの名前はおろか顔すらも覚えていなかったのだ。
だが、そんな彼もなぜか忘れられない一人の女性がいた。いや、正確には、顔や名前は忘れたが、彼女に言われた言葉は鮮明に覚えていると言っていいだろう。
それは、ある雨の日のことだった。
とあるパーティーで知り合った女性と意気投合したトニーは、いつものように彼女を家へと誘い、そのまま寝室へと向かった。
明け方になり、帰り支度を始めた女性は、ベッドに寝そべっているトニーに向かいポツリと呟いた。
「億万長者なのに、あなたってたった一つの物を持ってないわ」
『持っていないものがある』と言われたのだ。ベッドから飛び上がったトニーは、不快そうに眉間に皺を寄せた。
「何だ?言ってくれ。すぐに買う。私は金持ちなんだ」
ジャーヴィスに命じモニターを開いたトニーだが、女性は心底残念そうに肩をすくめた。
「本当に分かってないわね。お金じゃ買えない物なの。あなた、何かを求めてふらふらしているみたいだけど、それが分からない限り、幸せにはなれないわ」
図星だった。だが、赤の他人からそう言われると腹が立ってくるわけで…。不機嫌そうに唸ったトニーだが、彼が言い返す前に、女性は寝室から出て行った。
それから月日は流れ、トニーは人生で最高の日を迎えていた。
あの時は分からなかったが、今なら分かる。
自分に足りなかったのは、『愛』だ。偽りの見せかけだけの愛ではない。心からたった一人の人を愛するという心。
(君のおかげで私は真実の愛を知ったんだ)
純白のドレスに身を包んだ愛する女性を見つめたトニーは、祭壇に降り注ぐ暖かな光に目を細めた。
拍手お礼再掲。The Pepperony 100 Challengeより