「とっておきの技?」
トニーは向かってくる敵にリパルサーを放ちながら振り返った。背中合わせで矢を射っているのはホークアイこと、クリント・バートン。
「あぁ。トニー・スタークーなら、バレンタインのとっておきの演出を知ってると思って。ちなみに、お前たち、毎年どんなバレンタインを過ごしてるんだ?」
どちらかと言うと寡黙なクリントが饒舌なのは、次々と放つ矢がものの見事に敵に命中しているからだろう。
「私たちか?」
J.A.R.V.I.S.の警告に顔を上げたトニーは、頭上から向かってくるミサイルを撃ち落とすと肩をすくめた。
「毎年贈り物をしあっている。私は彼女の好きなチョコと薔薇の花束と…あとは洋服とジュエリーをプレゼントしている。そして夜はホテルでディナー。後は言わなくても分かるだろ?」
アーマーを着ているから分からないが、マスクの下ではおそらくウインクでもしているのだろう。だが、トニーの言う『言わなくても分かること』が知りたいクリントは、矢を数本まとめて射るとトニーの方へクルリと向いた。
「それが知りたいんだ!お前のテクニック…勿体ぶらないで教えろ!」
アーマーに縋り付くクリントを振り切ったトニーは、どうしてお前に教えなくてはならないんだと、慌てて逃げ出した。
「それはトップシークレットだ!」
「スタークのケチ!少しだけでいいんだ!」
逃げるトニーと追いかけるクリント。傍目から見ると、こんな戦いのさなか遊んでいるようにしか見えない。となると、この男が黙っているはずがなかった。
「スターク!バートン!!真面目にしろ!!」
スティーブの怒鳴り声が響き渡り、二人は飛び上がったのだった。
仕事が終わると早速スティーブに「緊張感がない」とお説教された二人だが、その後もクリントはやたらとトニーにくっついて来た。何とかはぐらかしていたトニーだったが、クリントがトイレに行っている隙にようやく逃げ帰ることができたのだった。
アーマーを脱ぎリビングへ向かったが、ペッパーの姿はない。
キョロキョロと辺りを見渡すトニーにジャーヴィスが声を掛けた。
『おかえりなさいませ、トニー様。ペッパー様はバスルームにいらっしゃいます』
寝室へ向かうと、ペッパーはすでにシャワーを浴びた後らしく、鏡の前で髪を梳かしていた。
「おかえりなさい」
トニーに気付いたペッパーは顔を輝かせると立ち上がり、腕を広げたトニーの胸元に飛び込んだ。
「ただいま。何だ、もうシャワーは終わったのか?」
首筋にキスを刻みながらバスローブの合わせ目から手を侵入させたトニーは、ペッパーの柔らかな素肌を撫で回し始めた。
ほんのりと頬を染めたペッパーは、トニーを見上げると首元に腕を回した。
「そうね…。でも、ミスター・スターク、もしあなたが入るなら…」
クスっと笑ったペッパーは、トニーの耳元に口を近づけた。
「もう一度入ってもいいわよ…」
耳元で甘い吐息と共に囁かれた言葉にニヤリと笑ったトニーは、ペッパーのバスローブをたくし上げると抱き上げた。トニーの腰に足を巻きつけたペッパーは、 ニヤニヤと笑みを浮かべるトニーの唇に甘く熱いキス。その間にもトニーの手はペッパーの身体を這い回り、バスローブははらりと床に落ちた。
抱き上げたペッパーにキスと愛撫を加えながら器用にもジーンズを脱ぎ捨てたトニーは、そのままバスルームへと向かった。
やがて唇を離したペッパーは、床に跪くとトニーのものを手に取りキスを始めた。バスルームの鏡に映るペッパー…何も身に纏っていないオンナは貪るように自分のモノにキスを繰り返している。
あのペッパー・ポッツにこんな露わもない淫靡な姿をさせられるのも自分だけ…。そんな秘技を誰が他人に教えるんだ…。
ニヤリと笑ったトニーは、ペッパーの髪を優しく梳と、頭を押さえこんだ。
自分の技は教えられないトニー