そして12月になり、明日からはクリスマス休暇。
明日には、トニーが戻ってくる。そして、初めてのクリスマスを一緒に過ごすことになっており、ペッパーは朝から浮き足立っていた。
放課後になり、スキップしながら部室へ向かうペッパーにみんなが声をかけた。
「ペッパー、嬉しそうね?」
「うん!明日ね、トニーが帰ってくるの!」
「クリスマスは一緒?」
「そうなの!トニーのご両親が仕事でヨーロッパに行かれてるから、うちのパパとママもだけど合流するの」
「さすが、セレブ…。いつから?」
「明後日から一週間の予定よ」
「お土産待ってるから!」
部室には誰もいなかった。戸締りをしたペッパーが鼻歌を歌いながら片付けていると、キリアンが入って来た。
「ヴァージニア、話がある」
真剣な顔をしたキリアンはペッパーの目の前に立った。
「どうしたの?」
振り返ったペッパーの手を掴んだキリアン。
「君が好きだ。付き合ってくれ」
そう言うと、ぐっと顔を近づけた。キリアンから逃げるように顔を逸らしたペッパー。
「ごめんなさい。私、彼がいるんです。彼とは結婚の約束も…」
鼻で笑ったキリアンは、ペッパーににじり寄った。
「知ってるさ。トニー・スタークだろ?でも、君のことを置いて遠くに行ってしまったじゃないか!」
肩を掴んだキリアンは、強引にペッパーの唇を奪った。
(い、いや!!)
抵抗するが男の力に叶うはずもなく、ペッパーは机の上に押し倒された。
「や!やめて!!」
手足をばたつかせるペッパーだが、キリアンは両手を頭上に掲げると、ペッパーの足の間に身体を入れた。
「大丈夫。俺は優しいんだ。一度俺とセックスすれば、あいつのことなんてすぐに忘れるよ」
恐怖に顔を歪めたペッパーに唇を合わせたキリアンは、嫌がる彼女の唇の隙間から舌を入れ、唾液を流し込んだ。吐き気がしたペッパーだが、キリアンは唇を離そうとしない。
そして、ペッパーのシャツのボタンを引きちぎると胸を掴んだ。泣き叫ぶペッパーの口にハンカチを押し込んだキリアンは、ブラジャーをずらすと胸にしゃぶりついた。
(いや!!トニー!助けて…)
ポロポロと涙を零すペッパーを満足げに見たキリアンは、
「その涙も美しい…。声を聞けないのは残念だけど…。カワイイ声は後でじっくり聞かせてもらうよ」
ニヤリと笑うとペッパーの下着に手をかけた。
(もうダメ…トニー……ごめんなさい……)
これから起こるおぞましい出来事から逃れようと目を閉じたペッパーの耳に、大好きな声が聞こえてきた。
「おい…俺のオンナに何してるんだ」
地獄の底から聞こえてくるような恐ろしい声に振り返ったキリアンは悲鳴を上げた。目を開けると、いるはずのないトニーが恐ろしい形相で立っているではないか。トニーに気づいたキリアンは慌てて逃げようとしたが、トニーの方が早かった。キリアンの胸倉を掴んだトニーは、彼の顔を思いっきり殴った。床に倒れたキリアンは、気を失ったのか動かない。
鋭い眼光でキリアンを睨みつけていたトニーだったが、ペッパーを抱き起こした時にはいつもの優しい目をしたトニーだった。
「トニー…わ、私…」
泣きじゃくるペッパーを優しく抱きしめたトニーは、
「ペッパー…大丈夫だ。俺が来たからもう大丈夫…」
と、ペッパーが落ち着くまで背中をさすり続けた。
しばらくしゃくり上げていたペッパーだったが、落ち着きを取り戻すと引き裂かれたシャツの上からジャケットを羽織った。
「明日帰ってくるんだったんじゃあ…」
よく考えれば、明日戻るはずの彼がどうして今いるのか分からない。首を傾げるペッパーにトニーは照れ臭そうに笑った。
「今日は午前中で授業が終わったんだ。一刻も早く君に会いたくて、いてもたってもいられなくなったんだ。連絡しなかったのは、君を驚かせたかったから。でも、よかった……間に合ってよかった…」
ペッパーを抱き上げたトニーは、教室を出ると車に向かった。ペッパーを助手席に乗せたトニーは運転席に座るとエンジンを掛けた。すると、それまで黙っていたペッパーが身を乗り出しトニーにキスをし始めた。
久しぶりのキスに夢中になった二人は、そのまましばらくの間お互いの唇を貪っていたが、銀色の糸を引きながら唇を離した。
「トニー …あいつにキスされたの…。それにね…胸も触られたの…。だから…トニー……お願い…抱いて?」
潤んだ瞳で見上げられ、トニーは
「あぁ…」
と一言返すと、自宅に車を走らせた。
自宅に着いたトニーは、急いでペッパーを抱き上げ部屋に駆け上がった。そして二人は空白の時間を埋めるかのようにキスをし続け、ペッパーはトニーの腕の中で何度も果てたのだった。
辺りがすっかり暗くなった頃。
トニーの腕の中で目を覚ましたペッパーは、枕元の時計を見て飛び上がった。
「大変…帰らなきゃ!」
とっくに門限の時間を過ぎており、このままでは両親…特に父親に雷を落とされ、下手をすれば外出禁止になるのは目に見えている。ベッドに起き上がり、今にも泣き出しそうなペッパーの腕を半分眠っていたトニーが掴んだ。
「大丈夫…。君の家に電話しておいた。今日中には帰しますって…」
ペッパーの両親が何も言わないのは、それだけトニーを信頼しているからなのだろう。よかった…と息を吐いたペッパーを組み敷いたトニーは、悪戯な笑みを浮かべた。
「だから、後、2時間はある…」
日付が変わる前にペッパーを送り届けたトニーだったが、ペッパーを襲った男の事を思い返していた。
確か、キリアンという奴だった。会ったことはないはずだが、名前は知っている。数週間前に父親から聞かされた話を思い出したトニーは、あいつがペッパーを傷つける前に何とかしなければ…と考えた。
翌日、朝からデートしていた二人は、ランチを食べると海沿いを散歩していた。
明日からのヨーロッパ旅行のことを話していた二人だったが、突然トニーの携帯が鳴り始めた。ディスプレイを見たトニーの顔に緊張が走り、ペッパーは何事かと彼の腕にそっと手を置いた。
「親父からだ。ペッパー、すまない。少し待っていてくれ」
何か重要な用件なのかもしれない…と、少し離れた場所にあるベンチへ向かったペッパーは腰を下ろした。
そこへ…。
「ヴァージニア?」
聞き覚えのある声がし顔をあげると、キリアンが目の前に立っていた。
「キリアンくん?」
昨日のことを思い出したペッパーは、立ち上がると後退った。だが、笑みを浮かべたキリアンは、ペッパーにゆっくり近づいてくる。
「ヴァージニア、どうして逃げるんだ?君は僕といるべきだ。あいつといるとダメになる」
その目は狂気に満ちており、ペッパーは震える身体を抱きしめるとキリアンから距離を置こうと、ゆっくり移動し始めた。
すると
「おい、またお前か。ペッパーは俺のオンナだ。手を出すな!」
ペッパーを守るように、トニーが二人の間に割り込んだ。トニーを見たキリアンは、ポケットに手を突っ込むと近付き始めた。
「あんたに彼女は幸せにできないさ?それに…」
トニーに近寄ったキリアンは、耳元に口を近づけ背中を叩いた。
「お前が死んだら、お前の親父も会社も彼女も傷つけないでいてやるよ…」
トニーの背中を引き寄せたキリアン。だがトニーは身体を震わせるとくぐもった声を出した。
ニヤっと笑ったキリアンは、トニーから身体を離すとペッパーに向かって微笑んだ。
「では、ヴァージニア。また後で」
キリアンが立ち去っても、トニーはその場から動かない。
「トニー?」
不審に思ったペッパーは、トニーに駆け寄った。ゆっくりと振り返ったトニーは顔面蒼白で、絞り出すような声で呟いた。
「ペッパー………おれ……」
ふと彼の足元を見ると、血溜まりが出来ているではないか。
「トニー?!」
慌てて身体を支えると、胸元と右のわき腹からどす黒い血が溢れ出している。息を詰まらせたトニーは、口から血を吐き出した。
「トニー!しっかりして!トニーったら!」
泣き叫ぶペッパーも朦朧としたトニーの瞳には映っていない。何度か瞬きしたトニーの目がゆっくりと閉じると、膝から崩れ落ちた。
「い、いやー!!!誰か…救急車呼んで!!!」
血だらけのトニーを抱きしめたペッパーの悲痛な声が、マリブのビーチに響き渡った。
トニー大学生×ペッパー高校生編。キリアンくんが酷いキャラですいません(滝汗)