⑱017.刻み付けた快楽

7月に入り夏休みとなったペッパーだが、先月末からトニーは新居を決めるためNYへ滞在しており、二人は会っていなかった。
「寂しいけど…来月になったらもっと会えないもんね…」
二人で撮った写真を見つめながらため息を付く娘に、母親は苦笑い。
「でも毎日電話をくれるんでしょ?トニーくんもマメね」
「電話は嬉しいけど、会ってぎゅーっと抱きしめてもらいたいの…」
可愛らしいというか何というか…それは大変ねと母親は話題を変えた。
「ところで、トニーくん、いつボストンに引っ越すの?」
「再来週…。明後日帰ってくるってメールが来たけど…」
と言うと、何やら指折り数えていたペッパーだったが、とある事実に気付くと顔色を変えて立ち上がった。
「どうしよう、ママ…。毎日会ってもあと10日しかない!」

二日後、トニーがLAに帰って来たのは深夜だった。
帰ってきたと電話をもらったペッパーは、今すぐにでも飛び出して行きそうだったが、夜遅いからとトニーに咎められ、泣く泣くベッドに入ったのだった。
翌朝、朝早くからめかしこんだペッパーは、10時前に家を飛び出して行った。
だが…。
「すみません、ペッパー様。トニー様はまだ起きられていなくて…」
出迎えてくれたジャーヴィスは、申し訳なさそうにペッパーに言った。
「そうですか…」
しょんぼりとしたペッパーだったが、ジャーヴィスは彼女の背中をそっと押した。
「お部屋に行かれてはどうですか?」

何度も入ったことのあるトニーの部屋。だが、すでに段ボールが山積みにされており、それを見たペッパーは、もうすぐお別れなのだと実感し口を尖らせた。 気を取り直してベッドを覗くと、ふかふかの大きな枕を抱きしめたトニーは、いびきをかいて眠っていた。
一緒に眠るときはいつも自分が先に気絶しているので、思えばトニーの寝顔を見たのは初めてだ。
(どうしよう…かわいい!!)
無邪気な顔をして眠るトニーはかわいらしく、これは私だけが見れるトニーよ!と思ったペッパーは、携帯を取り出すと写真を撮り始めた。
「ん…ぺっぱー…」
突然自分の名前が聞こえ目を覚ましたのかと思ったが、トニーはまだ眠っている。
枕を足の間に挟み込み寝返りを打ったトニーは、顔を枕に摺り寄せると何度もペッパーの名前を呼んだ。
(もしかして、私の夢を見てるの?)
途端に目の前に男が愛おしくなったペッパーは、ベッドに昇ると背後からトニーに抱きついた。

夢の中で恋人に抱きついていたトニーだが、背後から妙にリアルな感触に抱きつかれ、寝ぼけ眼を擦りながら振り返った。
すると、ペッパーが自分の背中に顔を押し付けキスをしているではないか。
飛び上がりそうになったトニーだが、ペッパーがキスをしながら小さく震えているのに気付いた。
(泣いてるのか?)
そっと肩越しに振り向くと彼女の目に涙が光っている。
(ペッパー…)
ゆっくりと振り向いたトニーはペッパーの身体を力強く抱きしめた。
「ただいま、ハニー」
「…おかえりなさい」
ぐすっと鼻を啜ったペッパーは顔をトニーの胸元に押し付けた。
「お家は決まった?」
「あぁ。そうだ。後で鍵を渡す。いつでも来ていいからな?」
「うん…。ねぇ、次はいつ帰って来れそう?」
本当なら毎週のように帰って来たい…。だが、大学が始まればそんなわけにはいかないだろう。
ペッパーの髪を撫でながら、トニーは申し訳なさそうに呟いた。
「向こうへ行けば、忙しくてなかなか戻って来れないと思うんだ。次に会えるのは、クリスマスかな…」
「3か月も会えないのね…」
落胆したような声を出したペッパーだが、顔を上げるとニッコリ笑った。
「でも、トニーの夢のためだもの。私、応援するから」
涙に濡れた頬に手を当てると、トニーは額をくっ付けた。
「俺の事忘れるなよ?」
「うん…」
小さく震える唇を奪うと、ペッパーはトニーのパジャマをギュッと掴んだ。
「このキスも忘れるなよ?」
「うん…」
ペッパーの服を脱がせたトニーは、体中に赤い印を刻み始めた。
「この身体も…覚えとけよ?」
「うん、うん…」
涙をぽろぽろと零し始めたペッパーは、体中にキスをするトニーの髪をそっと梳いた。
ズボンを下着ごとずらしたトニーは、ペッパーの脚の間に身体を入れると、ベッドサイドからゴムを取り出した。
「いいか、ペッパー…。お前は俺のモノだ。世界でただ一人の俺のオンナだ…。だから…」
トニーの瞳に浮かんだ涙に気付いたペッパーは、彼の背中に腕を回すと抱き寄せた。
「絶対に…何があっても忘れないから…。だから…忘れないように…いっぱいあなたを刻み付けて…」

十日後。
LAの飛行場で、トニーはペッパーに見送られていた。
そこへ、ナターシャとクリント、スティーブ、そしてジェーンとソー、ロキまでもがやって来た。
「みんな、どうしたんだ?」
驚くトニーに友人たちは笑った。
「お前がいなくなるんだぞ?」
「そうだよ、友達の見送りに来たらダメなのか?」
「先輩、元気で。帰ってきたらまた遊んでください」
「ペッパーのことは任せて!」
「おい、またハンバーガー食べさせろよ!」
次々と別れの言葉を言う友人とハグし合ったトニーは、零れ落ちそうになった涙をグッと堪えると満面の笑みを浮かべた。

「そろそろ行かないと、乗り遅れるぞ?」
時間を気にしていた律儀なスティーブに声を掛けられ、トニーは足元の荷物を持ち上げた。
「じゃあな、みんな。クリスマスには帰ってくる」
最後ぐらいは二人きりに…と、ペッパーに声を掛けたナターシャは、入口で待っているとみんなを連れて立ち去った。

ペッパーの目をじっと見つめたトニーは、足元に再び荷物を落とすと、愛情を込めて抱きしめた。
「浮気しないでね?」
「するもんか。君以外興味はない」
「電話していい?」
「ああ…毎日するよ…」
見つめ合った二人はしばらくキスをしていたが、搭乗のアナウンスが流れ始め、トニーはペッパーの頭をポンと叩いた。
「じゃあな、ハニー。行ってくるよ」
荷物を持ち歩き出したトニーは、ゲートをくぐると振り返った。
「愛してるよ!ペッパー!!」
大きな声で叫んだトニーは投げキスをするとニヤリと笑った。ギリギリの所まで小走りで駆け寄ったペッパーは、その背中に負けじと大声で叫んだ。
「私も!愛してるわ!トニー!!」
手を振りながら遠ざかって行く背中を見つめながら、ペッパーは小さな声で呟いた。
「待っててね…すぐにあなたの所に行くから…」

大学生トニー×高校生ペッパー編⑲052.侵食へ…

高校生パロ。7月の別れの時。

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