新学期が始まった初日。帰り支度をしていると、事情聴取よ…と、ナターシャに捕まったペッパーは、もう一人の親友であるジェーンと共にカフェテリアにいた。早速あれこれ聴き始めたナターシャの誘導尋問に見事引っかかったペッパーは、ものの数分後に、トニーと付き合い始めたことを暴露してしまった。
「嘘でしょ!!!」
大声を出し立ち上がったナターシャを、カフェテリア中の生徒が何事かと注視した。
「ご、ごめんなさい。何でもないです…」
手を振りながら腰を下ろしたナターシャは、声を潜めた。
「まさかあんたがスターク先輩と…」
信じられないとブツブツ言うナターシャに、ペッパーは口を尖らせた。
「そんなこと言わないでよ…。私だって信じられないんだから…」
「きっとペッパーの内面に惹かれたんじゃない?」
苦笑しながらも助け舟を出してくれたジェーンをチラリと見たナターシャは、大きく頷いた。
「そうよね…。だって、この子、スタイルはいいけど…胸はないし…。相手はあのトニー・スタークーなのよ?もっと胸の大きい絶世の美女と付き合うと思ってたのに…」
よく考えれば失礼なことを言われてるが、本当のことなので何も言えずペッパーは黙ってしまった。言い過ぎたと思ったのだろう。ニヤリと笑みを浮かべると、話題を変えた。
「で、どこまで進んだの?エッチはしたの?」
ナターシャどころかジェーンまで目を輝かせているのに気付き、ペッパーはため息を付くと小さく頷いた。パッと顔を輝かせた二人は身を乗り出した。
「ね、ねえ!先輩って…その…エッチが上手いって本当?」
「上手いって……私…キスもだけど、全部彼としか…」
真っ赤な顔をしてもじもじし始めたペッパーに、ナターシャは意地悪な笑みを浮かべた。
「でも、あんたのお子様な体型に、スターク先輩は満足してるの?それに、初心者すぎて物足りないんじゃない?」
何と返せばいいのか分からないペッパーは、口をぽかんと開けて固まってしまった。
確かにナターシャは、豊満な胸にくびれた腰と抜群のスタイルをしている。
それに引き換え、私は…。
透き通るような滑らかな肌をトニーは褒めてくれた。そしてすらっと伸びる足も…。だけど、小ぶりで谷間もあまりない胸には、きっとガッカリしてるはず。両手にすっぽりと収まる胸を見た彼は、「すごくカワイイ。最高だ」と言ってくれたけど…。それに、何も知らない私だから、きっと物足りないはず…。
どうしよう…と、泣き出しそうになったペッパーに慌てたのはナターシャ。奥手のペッパーに恋人ができたのが嬉しくて少しからかってみたくなったのだが、こんなに落ち込むとは思ってもいなかった。
ポロリと涙を零したペッパーに、何とかしなさいよと、ジェーンはナターシャを突ついた。どうしようかとキョロキョロし始めたナターシャだが、カフェテリアの入り口に彼女の恋人であるクリントと、その隣に噂のトニー・スタークが立っているのを見つけ手招きした。ナターシャに気づいたクリントは、トニーを引っ張ると三人のいるテーブルに駆け寄った。
「ナターシャ!会いたかったぞ!」
今にもキスをしそうなクリントをあしらったナターシャは、ペッパーが泣いていることに気付き顔をしかめているトニーを彼女の隣に座らせた。
「ペッパー、どうしたんだ?」
突然トニーが現れ、ペッパーは飛び上がった。
「せ、先輩?!」
ペッパーの大きな声にカフェテリア中の生徒が振り返った。そして、声の持ち主の隣にあのトニー・スタークが座っているのが分かるとざわつき始めた。
辺りに不穏な空気が流れ始めたのに気づいたトニーは、これはいい機会だとニンマリした。
「おい、クリント。お前の彼女は俺のオンナを泣かせたようだぞ?責任取ってくれ」
ペッパーの肩を抱き寄せたトニーは、周囲に聞こえるようにわざと声を張り上げた。
『俺のオンナ』というトニーの言葉に、小さな悲鳴が辺り一面から上がり、カフェテリア中の女子生徒がテーブルに倒れこんだ。
つまり、年末に学校中を駆け巡ったあの噂は本当だったわけで、トニー・スタークの新しい恋人は、あまり目立ちもしない一年生のヴァージニア・ポッツ。この大スクープを見逃すはずはなく、みんな一斉に携帯をつつき始めた。
そんな周囲の大騒動をよそに、トニーは真っ赤になっているペッパーの頬にキスをすると、ナターシャに向かってニヤリと笑った。
「で、女性三人で何を話してたんだ?」
トニーの友達の恋人として何度か顔を合わせたことのあるナターシャは、隣のジェーンを紹介しつつも苦笑い。
「先輩の話ですよ。まさかペッパーの彼が先輩だったなんて…。なんで教えてくれなかったんですか?」
「別に話す機会がなかっただけだ。まぁ、今日はいい機会だったみたいだけど」
聞き耳を立てているギャラリーをチラリと見たトニーは、ペッパーに向かって笑いかけた。
「ハニー、まだ時間も早いし、デートしよう。夕方まで可愛がってやるよ」
「と、トニー!!」
頭から湯気を出しそうなくらい真っ赤になっているペッパーは、ポカポカとトニーの肩を叩き出した。楽しそうに笑ったトニーは、ペッパーを抱きしめると立ち上がった。
「じゃあ、俺たちはこの辺で…」
二人の様子をニヤニヤと見つめていたナターシャだったが、先ほどまでの会話を思い出し、小声でトニーに尋ねた。
「先輩、この子、ウブなんです。お手柔らかにお願いしますね。でも、先輩は百戦錬磨なのに…物足りなくないんですか?」
ナターシャの言葉に一瞬目を丸くしたトニーだったが、ふんっと鼻を鳴らした。
「ペッパーは完璧だぞ?俺の理想のオンナだ。だから不満なんてない。それに…」
口の端を上げたトニーは、ナターシャの耳元で何事か囁くと、ペッパーを連れてカフェテリアを後にした。
「トニーの奴、彼女に夢中だな」
ジュースを啜ったクリントは、ジェーンの目の前のポテトを1本奪うと口の中に放り込んだ。その手をペチっと叩いたジェーンは、顔を赤くしているナターシャに尋ねた。
「ねぇ、先輩何だって?」
クリントからジュースを強奪したナターシャは、一気に飲み干すと大きく息を吐いた。
「『教え甲斐がある』ですって!それに…そのうちみんなが振り向くようなエッチな身体にさせるから見とけよ…だって…」
実にトニーらしい言葉に、三人は顔を見合わせるとため息を付いた。
高校生パロ。ナターシャとジェーンは同じ年の幼馴染設定