I want to live a second life with you.⑧

翌日。
トニーがリビングでコーヒーを飲みながらPC雑誌を読み寛いでいると、ポータルが開きストレンジが姿を現した。急に現れたストレンジに、トニーは飲みかけのコーヒーを噴き出した。
「おい、魔法使い。お前は連絡をしてくるということを知らないのか?」
顰め面をするトニーを無視したストレンジは、目の前のソファーに腰を下ろした。
「お前を生き返らせたものが分かった。インフィニティストーンだ」
トニーは目を見開いた。自分の命を奪ったあの石の気が変わって生き返らせたというのだろうか。それとも再び石を集めた誰かが、生き返らせてくれたのだろうか…。もしそうであれば、その誰かに礼を言うなり、意図を尋ねるなりしなければと、トニーは身を乗り出した。
「誰かが使ったのか?」
グイグイ近づいてくるトニーから逃げるように身を捩ったストレンジは、コホンと咳払いをした。
「あぁ、お前自身だ」
姿勢を正したトニーは、ポカンとした顔でストレンジを見つめた。が、ストレンジに冗談を言っている様子はなく、真顔で見つめ返してきた。

「私が?!」
暫くしてやっとの思いで叫ぶと、ストレンジは頷いた。
「5年前、指を鳴らした時、願わなかったか?『死にたくない』とか『生きたい』とか…」
そんなことは…と言いかけたトニーだが、よくよく考えると、頭の片隅で確かに願っていた。
『ペッパーとモーガンのそばで生きていたい』と…。
そこで、小さく頷いたトニーだが、そうなると何故このタイミングなのかということだ。
「だが、何故5年も経った今なんだ?」
するとストレンジは小さく首を振った。
「これは推測だが、あの時ストーンのパワーはお前の身体を蝕んだ。それが癒えるのに5年掛かった。その証拠に、あの時お前が負った傷は全て癒えているだろ」
ストレンジの話には説得力があった。誰かが魔法で生き返らせたのかと考えていたが、その誰かがいないのだから、ストレンジの言う通りなのかもしれない。いや、そう考えるのが妥当だ。
無理やりそう思い込んだトニーだが、次に浮かんだのは、どう説明すればいいのかということ。
「生き返った理由は分かった。だが、世間にどう説明すればいい?」
そう告げると、ストレンジは真顔で頷いた。
「その理由を一緒に考えてやろうと思い、今日はやって来た」
トニーは目をパチクリさせた。ストレンジとは付き合いも何も殆どなかったため、どんな人柄なのかも知らないが、こんなに親切な性格だとは思えない。だから何か目的があるのかと、一瞬疑ってしまったトニーは、フンっと鼻を鳴らした。
「やけに親切だな」
するとストレンジは、小さく肩を竦めた。
「あの時、お前を死に追いやったのは、私にも責任がある。あの時は唯一の方法だと思っていたが、後々考えたら、他にも方法は思いついた」
ストレンジの言葉にトニーは眉をつり上げた。
「責任を感じてくれていたのか?」
するとストレンジは頷いた。
「私だけではない。あの場にいた誰しもが、少なからず罪悪感を感じていた。何か自分にも出来たのではないかと、誰もが後悔した。勿論、お前の妻もだ。仲間の元に戻るよう、背中を押したのは自分だ。あの時引き止めていれば…と、彼女はずっと悔やんでいたぞ」

あの時、ペッパーが背中を押してくれたから、自分自身の悪夢を終わらせようと思えたのだ。それに、死ぬつもりなんてなかった。念のために遺言めいたメッセージは残していたが、タイムトラベルも成功すると妙な確信があったし、まさかあの後サノスと戦い、自分がストーンを使うなんて、完全に想定外だった。だからペッパーが後悔することなんて一つもないのに、彼女はずっと悔やんでいたというのだ。

目を潤ませたトニーの肩をストレンジはぽんっと叩いた。
「スターク、お前の死は世界中の人間が悲しんだ。誰もがお前に生きていて欲しかったと願った。だからお前が生き返ったのは、その願いが叶ったからかもしれない。だから怖がるな。生き返ったと本当のことを言え。この世界は摩訶不思議なことが多く起こっている。だからお前が生き返っても不思議ではない」
ストレンジの言葉は心に染み渡ったが、照れくささもあり、素直に礼を言いたくないトニーは、
「ストレンジ、お前らしくない言葉だな」
と、茶化してみた。すると
「この5年間、私にも色々あったんだ」
と、真顔で頷いたストレンジは、それから数時間、共に世間に公表する筋書きを考えてくれた。

結局、『未来の世界で誰かがタイムトラベルを行い、2023年の結末が変わったため、トニー・スタークは生き返った』と公表することになった。
そこで、ペッパーとモーガンが帰宅すると、トニーはストレンジとの話をした。
「そこでだ。早速会見の準備をしてくれないか?生き返ったことを皆の前で話す」
「ちょっと待って、トニー。いきなりあなたが現れたら、大騒ぎになるわ」
トニーを制したペッパーだが、彼は眉を吊り上げた。
「ハニー、いつまでも隠れて暮らすのは性に合わない。それに、このままだと、モーガンを学校に連れて行くことも、君とデートすることも出来ない。そうだろ?」
暫く黙っていたペッパーだったが、結局はトニーの意思を尊重し、近いうちに会見を開くと約束した。

⑨へ…

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