戦火に追われ逃げ込んだものの、若い夫婦に逃げ道はなかった。覚悟を決めた2人は離れ離れにならぬよう抱き合った。
「生まれ変わっても、私たち、また一緒になれるわよね?」
「あぁ。君のこと、必ず見つけるから…」
それが最期の言葉だった。見つめあった2人は唇を重ねると、迫り来る業火に身を委ねた…。
***
「何処かで会ったことがあるか?」
ある日、一人の女子社員とすれ違った。赤毛の髪の美しい女性だった。肩が触れた瞬間、今まで感じたことのない何かに襲われ、トニーは思わず声を掛けた。立ち止まった女性は、不思議そうに首を傾げた。
「いいえ。お会いするのは初めてです」
琥珀色とオーシャンブルーの瞳が交錯した。見つめ合った瞬間、何とも言えない懐かしさが込み上げてきた。そして互いの瞳に吸い込まれるような感覚に陥った。何故だか分からないが、ずっと昔からお互いのことを知っている気がした。
「今、ここで出会ったのは、運命か?」
我ながらキザな台詞だと思ったが、自然と言葉が口に出ていた。
「そうかもしれませんね」
クスクス笑いだした女性のその笑い声さえも懐かしく、トニーはすっと手を差し出した。
「トニー・スタークだ」
「ヴァージニア・ポッツです」
おずおずと差し出された柔らかな手の温もりは、トニーに生まれて初めて心の平安をもたらしてくれた。