あの事件の後、世界は一変してしまった。それでも残された人々は、以前の暮らしを取り戻そうとしたが、失われたものは戻ってくるはずはなかった。そしてトニー自身もまた、何かが変わってしまっていた。
「ねぇ、聞いてる?」
ボンヤリとしているトニーを突くと、ようやく我に返った彼はペッパーを見つめた。
「あぁ、すまない。何だ?」
「もう、しっかりして。さっきから5回は言ってるわよ。モーガンの部屋をどこにするかって話」
わざと頬を膨らませてみせると、申し訳なさそうにトニーは肩を竦めた。
目の前で息子のように思い始めていた少年を失ったことは、トニーの中で何かが永遠に変わってしまった。はっきりとは口に出さないが、おそらく彼自身の血を分けた息子もまた、失うのではないかという恐怖…。
トニーが小さく震えているのに気づいたペッパーは、彼の手を取ると自分のお腹にあてた。
「トニー、心配しないで。私もモーガンも絶対にどこにも行かないから…」
そう言いながら抱きしめると、小さく頷いたトニーの震えが止まった。