Need You Now3~新婚編3~

一週間後、帰宅した二人を待ち構えていたのは、たくさんのマスコミだった。
家の前に大勢のマスコミがいるのに気づいたトニーは
「ちっ!」
と、舌打ちすると、クラクションを鳴らした。スピードを出すこともできず、マスコミの間をゆっくり進む車。
「スタークさん!ご結婚されたと聞きましたが!」
「奥様を紹介していただけませんか?」
車越しに向けられるカメラとマイク。トニーは眉間に皺を寄せて黙ったまま。どうしていいか分からないペッパーは、助手席で思わず顔を覆った。そのペッパー に向けて、無数のフラッシュがたかれた。小さく震えるペッパーの肩を抱き寄せたトニーはそのまま車を走らせると、門を閉めた。

門の外の大勢のマスコミは、二人の動きを見逃さまいと、帰ろうとしない。
寝室の窓からそっと覗いていたペッパーは、不安そうにトニーを振り返った。
「どうするの?」
「ほっとけばいい。明日になったら会社に押し寄せてくるだろう。その時に話をする。それよりも…」
ペッパーを抱きしめたトニーは、首筋にキスをした。
「さっきの…飛行機の続き…いいか?」
「ま、まだするの?!」
飛行機の中だけではない。結局この一週間、ペッパーが妊娠中のため以前よりは大人しめに…ではあるが、ペッパーはトニーにずっと抱かれていたのだ。
真っ赤な顔をしたペッパーだが、先ほどまでの甘い時間を思い出し、もじもじと太腿をこすり合わせた。
「今まで散々我慢したんだ。いいだろ?」
小さく頷いたペッパーを押し倒したトニーは、うっとりした表情のペッパーの唇を奪った。

翌日。
まだ眠っているペッパーを残し、会社に向かったトニーは、車を降りるや否や、大勢のマスコミに囲まれた。一斉にマイクとカメラを向けられたトニーは、何か言いたそうにしているマスコミを制すると、ため息を付き話し始めた。
「君たちの言うとおり、先日結婚した。妻の名前はヴァージニア。近いうちに二人で会見を開く。だから、彼女を追い回したりしないでくれ」
その言葉に納得したのか、マスコミはそれ以上必要に追い回さなかった。

だが…次の日。
会議を終えて部屋に戻ってきたトニーを、真っ青な顔をしたエミリーが呼び止めた。
「社長…大変です…」
「どうした?」
「これを見てください」
差し出されたのはゴシップ誌。
表紙には、どこで手に入れたのだろうか、結婚式での二人の写真と、あろうことかハネムーンの…しかも海辺で生まれたままの姿で抱き合う二人の写真が載せられ、『トニー・スタークの乱れた性生活』という大きな文字が踊っていた。

中を読み始めたトニーは、書かれている内容に唖然とした。

『トニー・スターク氏の結婚相手は、スターク氏が先日まで教師をしていた学校の生徒。スターク夫人ことミセス・ヴァージニア・スタークは、当時現役教師だったスターク氏と数年にわたり関係を持っていた。スターク氏のセックスの相手の一人にすぎなかったヴァージニアだが、運良く妊娠。スターク氏はヴァージニアが卒業すると同時に結婚し、ヴァージニアもスターク夫人という称号を手に入れることに成功した。愛のない結婚はすぐに破局を迎えるだろうが、現役教師と生徒の乱れた性生活について、直接本人たちの口から聞いてみたいものだ』

「くそっ!」
手にもっていた雑誌を握り潰したトニーは、ゴミ箱に投げ捨てた。だが、
「社長…テレビでも報道されています。早く奥様のところへ…」
というエミリーの言葉に、トニーは走り出した。

途中何度も電話をかけるが、ペッパーは話し中のため繋がらない。トニーはジャーヴィスにテレビを付けるなと命じると、家へと急いだ。
その頃ペッパーは、たまたま付けたテレビから自分の名前が聞こえたため振り返った。
『…スターク氏と結婚したヴァージニアは、妊娠四ヶ月ということです。これは、ヴァージニアが学生の時にスターク氏と関係があったということでしょう…』
『…街の声です。えー、先生とでしょ?学校以外で何教えてもらうの?―エッチの仕方じゃない?―やだー!』
『…二人とも遊びだったんじゃないですか?スターク氏は、大勢の生徒と関係を持っていたという情報もあります。しかし、子どもが出来てしまった。そのうち離婚しますよ…』

「ジャーヴィス!消して!」
TVを消したペッパーは、トニーに電話をかけようとした。だが、携帯が鳴り、ペッパーは相手も確かめず電話に出た。
「もしもし?」
「ペッパー?聞いたわよ!あんた、学校でスターク先生に抱かれてたんでしょ?やだ!それでどんな顔して授業受けてたのよ!」
高校時代のクラスメイトからだった。思わず電話を切ったペッパーだが、たくさんのメールが届いていた。
『ペッパー、おめでとう!ついにミセス・スタークね!赤ちゃんも生まれるのね?今度遊びに行かせてね』
『おめでとう、ペッパー!スターク先生とペッパーの子供でしょ?きっとかわいいわね!楽しみ!赤ちゃんが生まれたら連絡して!』
仲のよかった友達からは祝福のメールが届いていた。だが、一方で…。
『何であんたがスターク先生と結婚するわけ?妊娠したから結婚しろって迫ったんでしょ?』
『どうせセックスもあんたから迫ったんでしょ?真面目な顔して…淫乱ね』
『あんたみたいなお子様、先生にはふさわしくないわ!』

嫉妬による誹謗中傷だらけのメールもたくさん届いており、ペッパーは携帯の電源を切ると、部屋の隅に投げ捨てた。

(違うわ…私たちはそんなんじゃない…。私たちは、愛し合ったから結婚したのに…。みんな、私たちのことを知らないのに、何で面白がってそんなことを言うの…)
床に座り込んだペッパーの目からは、涙がポロポロと零れ落ちた。
だがその時…お腹に鋭い痛みを感じたペッパーはうずくまった。腹部の痛みは増す一方。立ち上がることもできず、ペッパーは床に倒れた。
(赤ちゃんが…どうしよう…。トニー…助けて…)
連絡しようにも携帯は部屋の隅。必死で手を伸ばしたペッパーだったが、気を失ってしまった。

家の前には多くのマスコミが詰めかけていた。裏口から入ったトニーは、ペッパーの名前を呼びながらリビングへ向かった。
「ペッパー?」
だが返事はなく、キッチンへ向かおうとしたトニーは、ソファーの後ろで倒れているペッパーを見つけた。
「ペッパー!」
抱き起こしたペッパーは、青い顔をしてぐったりとしている。血相を変えたトニーは、
「おい!ペッパー!しっかりしろ!ジャーヴィス!病院へ連絡しろ!」
と叫ぶと、ペッパーを抱きかかえ車へ走った。

「切迫流産です。しばらく安静に…」
幸いにも子供は無事だったが、ペッパーの心はひどく傷ついているだろう。
「ペッパー…すまなかった。苦しませてゴメン…」
青い顔をして眠るペッパーの手をトニーは一晩中握っていた。

4へ…

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