病室へ向かうと、モーガンは目を覚ましていた。
「パパ…」
トニーに気づいたモーガンは、嬉しそうに手を伸ばした。
「眠り姫は目を覚ましたか?」
娘の手を握りしめたトニーは、額にキスをした。
「どこも異常はないから大丈夫ですって。でも念の為、明日まで様子を見させて下さいって…」
妻の言葉にトニーが頷くと、両親を見比べたモーガンは目を瞬かせた。
「あたし…およげるように、れんしゅうするね」
と、モーガンが震え出した。
「でもね……こわかった……こわかった……」
シクシク泣き始めたモーガンは小さく震えており、ペッパーは娘を安心させるように抱きしめた。
「大丈夫よ…パパとママがいるわ…」
「うん……」
トニーの手をギュッと握ったモーガンは、ペッパーに抱きつくと声を上げて泣いた。
「ボス…」
振り返ると、ハッピーが手招きしていた。
モーガンにもう一度キスをしたトニーが病室を出ると、弁護士が待ち構えていた。
トニーに向かって頷いたハッピーが入れ替わるように病室に入った。
「ハッピーおじちゃん!」
「チーズバーガー、買ってきたぞ?」
「ホント?!」
娘の嬉しそうな声を聞きながら、トニーはドアを閉めた。
そしてトニーは弁護士に早急に対応するよう告げた。
翌日モーガンは退院した。
高層階のNYの家の方が安全だろうと、3人はマンハッタンの家に戻ってきた。
が、モーガンは一人になることを怖がった。日中もトニーのそばを離れようとしない。夜も一人で眠るのを怖がった。そこで2人は自分たちの間に娘を寝かせることにしたのだが、モーガンはお腹の大きい母親に抱きつくのは申し訳ないと思ったのだろう。父親に抱きついたモーガンは、眠り始めた。が、モーガンは、夜中に何度も泣きながら目を覚ました。その度に2人は大丈夫だと言い聞かせた。
写真を撮ったのは、○△社の記者だった。
「掲載しないよう抗議したが…」
ようやく眠り始めた娘を左腕で抱きかかえたトニーはため息をついた。
「あの会社、前からあなたと私の…」
実は○△社とは何度もいざこざを起こしている。トニーとペッパーのプライベートにズカズカと侵入し、2人は何度も写真を掲載された。ペッパーの携帯がハッキングされ、ベッドの中で撮影した裸で抱き合っている写真を掲載されたこともある。
何度抗議しても頃合いを見計らった頃にこうやって色々と仕掛けてくるのだが、今回ばかりは娘の命までもが脅かされたのだから、2人とも我慢の限界だった。
「あぁ、そうだ。だから信用できない。果たしてどうなるか…」
翌朝。
弁護士が新聞を握りしめやって来た。
「報道の自由だと言うことを聞きませんでした」
一面にはモーガンの姿が掲載されていた。が、勿論入手経路も、その後の事件についても触れられていなかった。
モーガンの名前、年齢、誕生日、そして9月から通うキンダーガーデンについても、何処で入手したのか知らないが書かれており、トニーは唇を噛み締めた。
こうなると、報道は加熱していくのは目に見えている。娘を守るためには…そして自分自身のことについてもいい加減自らの口で語らねば…と考えたトニーは、弁護士に告げた。
「会見の準備をしろ」
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