7月になり、ペッパーのお腹はかなり大きくなってきた。徐々にお腹周りのゆったりとした服を着るようにしていたためか、今までマスコミにも気づかれていなかったのだが…。
ある日、『ペッパー・スターク、第二子を妊娠!』と、マスコミにすっぱ抜かれてしまった。
別に隠していたつもりではないし、わざわざ公表することでもないと2人は何も言っていなかったのだが、ペッパーの妊娠を知ったマスコミは、彼女を執拗に追いかけ始めた。
ハッピーがガッチリとガードしているのだが、暫く落ち着いていたパパラッチがまた賑やかになってきたため、モーガンに危害が加わる前に…と、一家は湖畔の家で過ごすことにした。
「やっぱりここは涼しいわね」
心地よい風が吹き抜け、やはり街中よりも涼しく過ごしやすい。
水着に着替えたトニーは、湖畔にパラソルを立てた。ライフジャケットを着たモーガンも浮き輪を手に準備万端だ。
「よし!モーガン!泳ぐぞ!」
「うん!」
モーガンを水の中に入れたトニーだが、自分は勢いよく水の中に飛び込んだ。辺りに飛沫が飛び散り、モーガンはキャーっと歓声を上げた。
ペッパーはパラソルの下でリクライニングチェアに座り、2人が遊ぶのを写真に撮ったりと楽しげに眺めていた。
「あら?何かしら…」
暫くして、ペッパーは反対側の岸辺の木の陰で何かが光っているのに気づいた。その光の正体に何となく感づいたペッパーは、背筋が凍りついた。
「トニー…」
ペッパーは慌てて夫を呼んだ。緊迫した妻の声に、トニーの顔にも緊張が走った。
「どうした?」
「向こうで何か光ったの…」
青ざめた妻を見つめたトニーは頷くと、娘を呼んだ。
「モーガン、上がるぞ?」
「えー、まだあそびたい!」
「ダメだ。風邪引くからまた明日にしよう」
「はーい」
娘を抱き上げたトニーは、ペッパーを守るように家の中に入った。
翌日。スクープと称して湖で遊ぶスターク一家の映像が朝のニュースで流れた。
モーガンの姿もハッキリと捉えられており、初めて世間にお披露目されたトニー・スタークとペッパー・スタークの娘だと、マスコミは騒ぎ立てているではないか。
そしてもう一つ…。
『右腕を失くしたトニー・スターク』と、トニーの義手のことも報道された。それも見当違いな理由を付けて…。
あることないことを報道し始めたマスコミに、ペッパーは震え上がった。
トニーは黙ってテレビを見ていた。
右腕を失ったこと、そして今は義手になったこと…それは別に発覚してもよかった。隠しておくつもりもなかった。
だが、マスコミは私有地に不法侵入し、妻と娘の姿を撮影したのだ。それは許されることではない。
モーガンには自由に、そして普通の子供と同じように生きて欲しいと、これまで一度も敢えて娘のことは公表していなかったのに…。
きっとこれからはモーガンも追いかけ回される…。
子供時代からマスコミに追いかけ回され、あることないこと報道される辛さを、トニー自身が一番分かっていた…。だからこそ、トニーはモーガンをマスコミの前に連れて出なかったのだ。
「F.R.I.D.A.Y.、消してくれ」
テレビを消したトニーは、携帯を取り出した。
「警備を強化する」
妻に向かってそう告げたトニーは、ハッピーに連絡を取り始めた。
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