年が明け、NYには雪がちらつき始めた。
あれから半年経ったが、朗報はなかなか訪れない。
モーガンはプリスクールに通い始めた。
最初は行きなくないと愚図ったモーガンだが、すぐに沢山の友達が出来た彼女は、毎日楽しそうに通うようになった。そしてトニーも、モーガンを送り届けた後は、時折会社に向かい開発チームに顔を出すようになった。そして娘を迎えに行くと、そこから2人は父と娘の時間を楽しんだ。
2月になった。ハッピーに留守番を頼んだ2人は、久しぶりに夫婦だけのデートを楽しんでいた。
夜景の一望できるレストランでディナーを食べた後、5つ星ホテルのスイートルームで一晩過ごすことになっているのだが、ホテルに着いた2人を、どこで情報を掴んだのか、パパラッチが待ち構えていた。
パパラッチが最後にトニーの姿を捉えたのは1年以上前。彼にとっての最後の戦い以前も、トニーは殆ど姿を現していなかったので、久しぶりのトニー・スタークの姿に、パパラッチは一斉にカメラを向けた。フラッシュのせいで辺りは昼間のような明るさになり、トニーは小さく舌打ちすると顔を顰めた。ペッパーは夫の右側に身体を寄せた。というのも、いらぬ詮索はされたくなかったから…。義手を隠すようにギュッとトニーに抱きつくと、彼も妻の意図を察したのか、見せつけるようにキスをすると、ホテルの中に急いだ。
「全く…。折角のデートなのに…」
エレベーターの中でぶつぶつ言い始めた夫に、ペッパーは肩を竦めた。
「仕方ないわ。あなたはトニー・スタークなんですもの。しかも、あの後ですもの。だから皆、あなたの姿を捉えようと必死なのよ」
妻の言葉に目をくるりと回したトニーだが、今宵の2人きりの夜に集中しようと、彼女の腰を引き寄せた。
部屋からはNYの摩天楼が一望でき、窓際に向かったペッパーの胸に懐かしさがこみ上げてきた。今の家も高層ビルの最上階のため、夜景は見える。だが、ここはそれよりも高層なため、スターク・タワーから見えた夜景と同じだったのだ。
暫く眺めていると、トニーが隣に立った。ジャケットを脱ぎネクタイを緩めたトニーは、それを近くのソファに放り投げると、ズボンのポケットから小さな箱を取り出し、ペッパーに渡した。
「ハニー…」
トニーの声に箱を開けると、中には指輪が入っていた。指輪の内側には文字が刻まれていた。
“I love you 3000…” と…。
娘がトニーに伝えた言葉。それは娘だけではなく、家族全員にとっての大切な言葉になっていた。
唇を震わせたペッパーの指に指輪をはめたトニーは、妻を抱き寄せると甘い声で囁いた。
「愛してる…。ペッパー、世界一…いや、宇宙一愛してる…」
トニーの身体に腕を回したペッパーも、彼の胸元に顔を押し付けると囁いた。
「私も…愛してるわ…」