寝室に向かったペッパーだが、トニーはいなかった。そこで以前とは比べものにならないくらい狭いが充実した彼のラボに向かうと、トニーは義手を整備中だった。
「やあ、ミセス・スターク。ミス・スタークは眠ったか?」
「えぇ」
トニーにキスをしたペッパーは、隣の椅子に腰掛けると、先程の娘のお願いを夫に伝えることにした。
「モーガンにおねだりされたわ」
「何を?おもちゃか?」
「いいえ、赤ちゃんが欲しいんですって」
目をパチクリさせたトニーは、義手を装着した。
「弟か妹が欲しいってことか?」
「そうみたい」
トニーはうーんと唸った。
自分はもう53だ。ペッパーも40を超えている。自分はまだしも、実際に妊娠して子供を産むのはペッパーだ。子供がもう1人欲しいとずっと思ってた。だが、あんな世の中だったし、もし自分に何かあれば…と考えると、そしてペッパーの身体の負担になるのなら…と、言い出せなかった。
「ペッパー、君はどう思ってるんだ?」
自分の思いを告げたトニーは、妻に尋ねた。
「私は…」
トニーに問われ、ペッパーは考えた。
2人目はずっと欲しかった。なかなか出来なかったのも事実だが、トニーの言う通り、あの暗闇の世界で、踏ん切りがつかなかった。
だが、世界は元通りに…いや、今までよりも素敵な世界になった。だからもしこのタイミングで妊娠したら、きっと自分たちは今まで以上に幸せになっても良いこと…。
そう考えたペッパーは、甘えるようにトニーに抱きついた。
「2人目…頑張ってみない?」
「いいのか?」
照れ臭そうに笑ったトニーの頬にペッパーはキスをした。
「えぇ。だって男の子が欲しいでしょ?」
トニーは息子を欲しがっていた。勿論娘も欲しがっていたのだが、モーガンを妊娠した時、どちらが欲しいと聞いたところ、『どっちでもいいさ。元気に産まれてきてくれるなら。だが、息子だったら、一緒にキャッチボールをしたい。親父と出来なかったことをやってみたい』と語ったことがあったのだ。
「実は…そうなんだ」
神妙な顔をして頷いたトニーは、ペッパーの頬を撫でると唇を奪った。
トニーのキスは、ペッパーの身も心もドロドロに溶かしてしまう。トニーの首元に腕を回したペッパーは、身体を擦り寄せた。
「ねぇ…ここでしない?」
キスの合間に囁くと、トニーは眉を吊り上げた。
「ここでか?」
ラボを見渡したペッパーは、悪戯めいた笑みを浮かべた。
「だって…懐かしくない?」
恋人時代にはよくラボで愛を交わしていたことを思い出したトニーは、妻を抱き上げるとソファーに移動した。
「いいさ。君がボスだ。だから私は従うまでだ」