翌朝。
トニーの腕の中で目を覚ましたペッパーだが、彼はまだ眠っていた。
ペッパーはトニーを見つめた。
トニーは幸せそうに笑みを浮かべて眠っていた。悪夢に怯えていた頃の彼は、いつも眉間に皺を寄せ、苦しそうに眠っていた。が、あの戦いの後、彼は悪夢を見ることなく、ぐっすりと眠ることができるようになった。
(本当に…本当によかった…)
トニーが苦しみもなく幸せに暮らしてくれること…それこそがペッパーの一番の幸せだった。
トニーの胸元に顔を擦りよせ、素肌にキスをしていると、トニーが大欠伸をしながら目を覚ました。
ペッパーの髪を右手で梳いたトニーは、一房掴むとキスをした。
「おはよう、ハニー」
「おはよ…ダーリン…」
まだ微睡んでいるトニーに首を伸ばしキスをしたペッパーは、再び彼に寄り添った。妻を抱きしめ直したトニーだが、彼女の体温が普段よりも少し高いことに気づいた。
「熱でもあるのか?いつもより熱いぞ?」
「そう?」
風邪でも引いたのかと思ったが、自分では特に何も感じないのだ。だが、身体を冷やしては大変だと、起き上がったペッパーはバスルームへと向かった。
シャワーを浴び、メイクをしていたペッパーだが、急に吐き気を催した。
5年前…モーガンを妊娠した時と同じだと気づいたペッパーは目を輝かせた。
まだはっきりした訳ではない。違っていてトニーを期待させてはいけないと考えたペッパーは、まずは病院へ行くことにした。
帰宅すると、モーガンが家から飛び出してきた。娘を軽々と抱き上げたトニーは、顔中にキスをした。
「寂しかったか?」
「うん…。でもね、ハッピーおじちゃんとね、いっぱいあそんだからね、たのしかったよ!」
モーガンは、ハッピーとの楽しいひと時を機関銃のように父親に話し始めた。
娘はトニーに任せて病院へ行って来ようと考えたペッパーは、着替えるとトニーに告げた。
「トニー、買い物に行ってくるわ」
「一緒に行くぞ?」
が、ペッパーはトニーを驚かせたかったので、笑顔で首を振った。
「すぐに戻ってくるから、モーガンと留守番してて」
病院へ向かったペッパーは、予想通り朗報を聞くことができた。
「スタークさん、おめでとうございます」
エコーで小さな我が子を見せてもらったペッパーの目から涙が零れ落ちた。
自分もだが、トニーとそしてモーガンの願いがようやく叶った瞬間だった。
エコー写真を貰ったペッパーは、飛び跳ねるように家へと戻った。そしてモーガンが昼寝をしている間に、ペッパーは夫へ報告することにした。
そこで彼の好物のドーナツを作った。コーヒーを入れ、アイアンマンのフィギュアにエコー写真を持たせると『大好きなパパへ!』と付箋に書いて貼り付けた。それらをトレーに載せたペッパーは、モーガンから作るよう頼まれていたアベンジャーズのLEGOを組み立てている夫の元へ向かった。
「トニー、ドーナツ食べる?」
「あぁ」
トニーの前にペッパーはトレーを置いた。彼は一体どういう反応をするかしら…と、ドキドキしながら…。
アイアンマンと写真に気づいたトニーは、目を丸くした。そして写真を大切そうに手に取った彼はじっと見つめていたが、暫くして彼の目からポロっと涙が零れ落ちた。
「ハニー…」
涙で濡れた瞳でトニーはペッパーを見つめた。
「5週目ですって」
夫の濡れた頬を拭ったペッパーは微笑んだ。
トニーは再び写真を見た。そこに映るまだ小さな胎児をなぞったトニーは、黙ってペッパーを抱きしめた。
トニーは泣いていた。身体を震わせ泣いていた。
「ペッパー……生きていてよかった…」
何度もトニーはそう言い続けた。そして夫に抱きついたペッパーも、嬉し涙を流し続けた。
娘にもすぐに報告しようと思った2人だが、もうすぐモーガンの誕生日。その時には胎児の性別も分かっているだろうから、とっておきの誕生日プレゼントにしようということになった。