Another World of 2012:NY…12

数日後、最悪の事態が起きてしまった。

ラゴスで起こった爆破事件。死者は多数に及び、そしてそれはアベンジャーズの過失で起こってしまったのだ。
国際社会から批判を浴び続けるアベンジャーズの姿に、トニーは胸が痛んだ。そして彼は、仲間をどうにかして守らなければいけない…そのためには、自分が動かねばならないだろうと感じた。
が、事態はさらに悪化の一途をたどった。アベンジャーズを国連の管理下に置く「ソコヴィア協定」が、世界各国で支持されたのだ。

テレビでニュースを見ていたトニーは、モーガンを抱きしめ震えるペッパーに告げた。
「行ってくる…」
が、ペッパーは感じた。何故か分からないが、トニーを行かせてはならない気がした。
「待って…行かないで…」
泣きながら夫を止めたペッパーだが、トニーは妻の制止を振り切って、北部の基地へと向かった。

基地に着くと、国防長官となったロスがトニーを待ち構えていた。
「ちょうど良かった、スターク。お前たちに話がある」
ロスは分厚いファイルを持っていた。おそらく例の協定だろう…。
事態は自分が把握している以上に悪化しているのかもしれない…。
気づかれないように溜息をついたトニーは、ロスと共に皆が集まっている部屋に向かった。

アベンジャーズを集めた部屋で、ロスは協定について話し始めた。
ロスの話を聞きながら、トニーはどうすべきか考えた。
トニーは守りたかった。今の自分の生活を…。そしてアベンジャーズを…。
だから彼は協定にサインすることにした。
ローディもサインした。ナターシャもサインした。
だが、キャプテンは拒んだ。協定が足枷となり、自由に動けなくと、スティーブは協定にサインすることを拒んだのだ。

ロスが退出すると、スティーブは真剣な眼差しで皆を見渡した。
「バッキーの…ウィンターソルジャーの居場所が分かった」
バッキー…つまりウィンターソルジャーは、数々の事件の首謀者とされている。
「バッキーを連れ戻しに行く」
スティーブの眼差しは本気だった。彼はウィンターソルジャーを、自分の親友であるバッキーとして、連れ戻そうとしている。それもおそらく、どんな手を使ってでも…。
「おい、キャプテン。あいつは、あんたの知っているバッキーじゃないんだぞ?」
トニーは思わず忠告した。
テロ事件の首謀者として、ウィンターソルジャーは指名手配されていた。
そんな彼を匿えばスティーブも追われるに決まっているからだ。
「なぁ、じいさん。冷静になれ。ウィンターソルジャーは指名手配犯だ。そんな奴を助けてみろ。今度はあんたが…」
「ウィンターソルジャーじゃない!バッキーだ!」
すっかり冷静さを失っているスティーブに、トニーは頭を抱えた。このままだと最悪の事態になりかねない。だが、今のスティーブに言っても無駄だろう…。
「いいか、私は忠告したぞ?どうなっても…最悪の事態になっても知らないからな…」
そう言うと、トニーは部屋を出て行った。

***

帰宅したトニーを出迎えたペッパーは、暗い顔をしている夫に、事態が予想以上に悪い方向に向かっていると悟った。
「どうだった?」
念のため聞いてみると、トニーは首を振った。
「キャプテン・アメリカはどうしようもない程石頭だった」
やれやれと息を吐いたトニーは、ジャケットを脱ぐとソファーに怒り任せに投げ捨てた。
「いいの?行かなくても…」
ペッパーの不安に気づいたトニーは、何度か深呼吸をすると、妻に向かって微笑んだ。
「あぁ。行けば巻き込まれる。だから私は動かないからな」

そう決意したトニーだが、数日後、協定の調印の場で、新たなテロが起きた。
ワカンダ国王が死亡するという、痛ましい事件に、世界中大騒ぎになった。
首謀者はウィンターソルジャーだった。
そしてそのウィンターソルジャーを匿っているとして、スティーブも指名手配された。

トニーは動かなかった。
事態はもはや自分の手に負えない程悪化してしまった。下手に動けば、皆が傷つくだけだ…。そう考えたトニーは、敢えて動こうとしなかった。

だが、世間はそれを許してはくれなかった。
ロスが部下を引き連れて、家へと乗り込んできたのだ。

スティーブとウィンターソルジャーを一刻も早く捕まえるように、ロスはトニーに命令した。が、トニーは拒んだ。
「お断りします」
毅然とした態度でトニーはロスに向かって告げた。が、ロスの方も負けてはいなかった。
「スターク、いいか、お前は協定にサインした。これは命令だ。命令に背くと…お前も捕まえるぞ?」
もはや脅しでしかなかった。
協定をそんな風に盾に使われるとは思ってもみなかった。
唇を噛み締めたトニーだが、彼にも可愛らしい援軍がやって来た。
「ぱぁぱ!」
まるで父親を助けにきたという風に、よちよちと歩いてきたモーガンは、ロスを睨み付けると”No!!”と叫んだ。
先日のことを思い出したトニーは、慌てて娘を抱き上げた。ロスの前でエクストリミスのパワーを見せたりすれば、モーガンは彼の格好のターゲットにされてしまうだろうと、トニーは娘をギュッと抱きしめた。

「よく考えろ、スターク。妻と子供は大切だろ?この意味が分かるだろ?」
言うことを聞かなければ、妻子を傷つける…。ロスの瞳はそう語っていた。
ペッパーとモーガンは、何の関係もない。それなのに、どうして妻子を盾にされなければならないのだろう…。
ふつふつと沸き起こった怒りに、トニーは徐々に支配された。
怒りに満ちた瞳でロスを睨みつけたトニーは、今や真っ赤に燃え上がった瞳をしており、首元も僅かにオレンジ色に光り出した。
トニーの後ろでそっと見守っていたペッパーは、夫の変化に気がつくと、彼を落ち着かせるように腕を掴んだ。

我に返ったトニーは、仕方なく告げた。
「…説得するだけです。それだけなら、引き受けます…」

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