トニーとペッパーとモーガン…3人が過ごす家の中では、平穏な日々が続いていたが、2人を取り巻く環境は確実に激変していた。
トニーはアベンジャーズの仕事から一歩引いて傍観していたし、半分引退しているようなものだったが、トニーは細々とアーマの改良は続けていた。
モーガンが歩き始めた頃。
年が明けたNYは辺り一面雪景色だった。
出社したペッパーを見送ったトニーは、モーガンに本を読み聞かせていた。
トニーが読んでいたのは、アイアンマンの絵本。父親がアイアンマンだと教えている訳ではないのに、モーガンはアイアンマンが大好きだった。
「ぱぁぱ、あーあーま!」
アイアンマンのイラストを指差したモーガンは、トニーを見上げた。
「そうだ。アイアンマンだ。よく知ってるな」
そう褒めると、モーガンは嬉しそうに笑った。
と、J.A.R.V.I.S.が来客を告げた。
それはスティーブ・ロジャースだった。
モーガンは見知らぬ来訪者に顰め面をした。というのも、トニーはモーガンをアベンジャーズの面々には会わせていなかったのだ。
「トニー、久しぶりだな」
そう言いながら差し出したスティーブの手をトニーも握り返した。
スティーブは新たなアベンジャーズを結成し、これからラゴスへと向かうことをトニーに告げた。ラムロウこと、クロスボーンがテロを計画しており、敵は大勢いるため、是非とも力を貸して欲しいと、スティーブは助けを求めてやって来たのだ。
「手伝ってくれないか?」
何度も頼むスティーブだが、トニーは首を縦に振らなかった。
「すまないが、断る。子守の真っ最中なんだ」
トニーとて、必要があらば駆け付ける準備はいつでもできていた。何故なら自分はアイアンマンなのだから…。だが、自分がヒーロー活動をし始めた当初よりも、ヒーローは大勢増えた。そして裏方に徹し彼らの様子を見ていたが、自分が駆け付けなくとも、彼らは上手くやっていた。それに今のトニーの優先順位は家族が一番なのだ。
見るからに嫌がっている父親の様子に、それまで黙っていたモーガンが叫び声を上げた。そしてスティーブを父親の敵だと思ったのか、彼女はそばにあった積み木を投げた。
スティーブの真横を通った積み木は、そのまま壁にのめり込んだ。
スティーブがポカンとモーガンを見つめた。1歳にもならない幼子のどこにそんな力があるのかと、今目にしたことが信じられないといった様子だ。
トニーは溜息をついた。勿論、エクストリミスの影響だ。モーガンは癇癪を起こすと、トニーもペッパーも手がつけられないほどのパワーを発揮した。その度に2人はモーガンに言い聞かせた。幼子には分からないかもしれないと思いつつも、授けられた力は正しく使えと言い聞かせた。トニーに似て賢いモーガンは、両親の言葉を理解したようで、最近ではあまり癇癪も起こさず、パワーを抑えることができるようになってきていたのに…。
「モーガン、積み木は人に向かって投げるものじゃないぞ」
そう言いながらトニーはまだ不満げに文句を言っている娘を抱き上げた。
彼自身も、そしてペッパーも、ローディ以外の仲間には、エクストリミスの件を話しても見せてもなかった。だからモーガンのパワーをスティーブは不審に思うかもしれない。口が硬いスティーブのことだから、誰かに話したりはしないだろう。だが、世間には秘密にしておかねばならない…。
「さっき見たことは、誰にも話すな。それと、力にはなれない。すまないな」
そう告げたトニーは、何か言いたげなスティーブを家から追い出した。