Until now I have been looking for you.④

学園内では相変わらず『仲良くは見えない関係』を続けている2人だが、時折何かの折に見つめ合うようになった。最も気づかれないようにしているため、2人の関係に気づく者は誰一人としていなかったが…。

初めてのキスは、付き合い始めて1週間経った週末のことだった。
定番のデートスポットかもしれないが、トニーはグリフィス天文台にペッパーを連れて行った。が、夜景を見た瞬間、ペッパーは子供のように目を輝かせた。
「凄いわ!素敵な夜景ね!」
感動しまくるペッパーは可愛らしく、隣に並んだトニーは彼女の肩をそっと抱き寄せた。
「ペッパー…」
名前を呼ばれたペッパーはトニーを見つめた。トニーの吸い込まれそうなくらい真剣な瞳に囚われたペッパーは、唇を小さく震わせた。
と、トニーの顔が近づいてきた。ペッパーが目をそっと閉じると、柔らかな唇が重なった。初めてのキスは触れる程度のものだったが、続きを求めるかのようにペッパーはトニーを見つめた。
「もう一回…」
そう告げたトニーは先程よりも深く唇を押し付けた。二度目のキスは最初のものよりも甘ったるく、ペッパーはトニーのシャツをキュッと掴んだ。と、トニーがペッパーの背中に腕を回した。身体が密着し、口づけはより一層深くなり、息苦しくなったペッパーは軽く口を開いた。その隙に、トニーの舌がペッパーの舌に絡みついた。
初めて経験するキス…いや、今日がペッパーのファーストキスなのだから、何もかもが初めてなのだが…。頭の中はドロドロに溶け始め、何も考えられなくなってきた。
「ん……」
ペッパーの唇の隙間から甘い吐息が漏れたのを合図に、トニーは唇を離した。
「とにー……」
舌足らずな口調で名前を呼ばれ、トニーはゴクリと唾を飲み込んだ。真っ赤な顔をしたペッパーは潤んだ瞳でトニーを見つめた。
(そんな顔で見つめるなよ…)
心臓が跳ね上がったトニーは下半身が熱くなり始めた。

おい、いつもみたいにさっさとやっちまえ。

欲に塗れたもう一人の自分の囁きに、トニーは従いそうになった。が…。

約束を守りなさい、トニー・スターク

『彼女』の声が聞こえた。ここで自分に負ければ、あの頃に…決別したはずの自分に戻ってしまう…。
(違う!ペッパーは…ペッパーは違うんだ!)
何度も深呼吸をしたトニーは、もう一人の自分を追い払うと、恥ずかしそうにモジモジしているペッパーの手を握りしめ、車に向かって歩き始めた。

車中でも2人は黙ったままだった。
先程の初めてのキスを思い出したペッパーは、恥ずかしくて何を話せばいいのか分からなかったが、何か話を…と、ずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
「ねぇ、聞いていい?どうしてLAに来たの?」
と、トニーの表情が曇った。
聞かれたくない事情があるのだと悟ったペッパーは謝ろうとしたが、彼女をチラリと見たトニーが口を開いた。
「あぁ…実はさ…」
一瞬口を噤んだトニーだが、わざとらしいくらいの明るい声で話し始めた。
「前の学校、退学処分になったんだ。校則を破りまくってさ。で、速攻で退学」
ぽかんと口を開けたままのペッパーに視線を送ったトニーは、肩を竦めた。
「ま、面白くも何ともなかったから、丁度良かったんだけど」
彼は今でも校則を破りまくっているが、それがまさか転校してきた理由だったとは…。
呆れ果てているのか、相変わらず黙ったままのペッパーに、トニーはニッコリ笑みを浮かべた。
「それに、君と出会えた。だから俺、ここに来てよかったって、本当に思ってるんだ」

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