クラグリンに支えられるように、入口に立っていたトニーは、扉が開くと、1歩ずつゆっくり歩き始めた。
地上に降り立ったトニーは、誰かが出迎えてくれているのに気づいた。
ペッパーだった。
(生きていてくれた…)
お互いの存在を確認しあった今は、それだけで十分だった。
真っ赤な目をしたペッパーに、トニーは思い出した。10年ほど前の、アフガニスタンから帰還した時の彼女を…。
あの時も彼女は泣いていた。目を真っ赤に腫らし笑っていた。
あの時も、彼女に二度と会えないかもしれないと思った。
だが、我々は再び会えた…。
クラグリンから手を離したトニーは、ゆっくりとだがペッパーに向かって歩き始めた。が、筋力の落ちた足では、もどかしい程、前に進まなかった。足が縺れ倒れそうになったが、駆け寄ってきたペッパーがトニーを抱きしめ支えた。
やつれた頬に髭面のトニーだが、彼の身体には温もりがあった。
「おかえりなさい、トニー…」
そう囁いたペッパーは、トニーの肩に顔を埋めると泣き始めた。
ペッパーの涙は温かかった。
帰ってきた…。彼女の元に帰ってきた…。
これは…夢じゃない…。
腕の中にいる最愛の人は…本物のペッパーなのだから…。
「ハニー……ただいま……」
ペッパーをギュッと抱きしめたトニーは、無事にペッパーの元に戻ってこれたことを神に感謝すると、そっと目を閉じた…。
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