A boy who came from the future.⑪【END】

「父さん、母さん、20年後の世界で待ってるから!」
翌日。トニーとペッパーとハグをし合ったモーガンは、やはり名残惜しいのかなかなか離れようとしなった。
「2年経ったらお前に会えるんだろ?」
辛い別れを隠すようにトニーが軽く頭を小突くと、モーガンはパッと顔を輝かせた。
「そうだった!じゃあ、すぐ会えるね!」
大きく頷いたモーガンは、涙を流しているペッパーにもう一度抱きつくと、タイムマシンに乗り込んだ。
「じゃあね!」
そう言いながら、モーガンはトニーそっくりな笑顔を残し消えていった。

「息子か…」
モーガンがいた場所をじっと見つめていたトニーは、涙を拭っているペッパーを抱き寄せた。
「なぁ、ペッパー」
「なぁに?」
いつになくしんみりとした声色に、ペッパーが首を傾げると、トニーは悪戯めいた瞳を輝かせた。
「2年も待てない」
「つまり?」
どういうことかとペッパーはトニーをじっと見つめたが、頬を両手で包み込んだトニーは、ペッパーの唇を奪った。
「今すぐ子供を作ろう。1年でも早く、モーガンに会いたくないのか?」
「それはそうだけど…」
モーガンが生まれるのは2年後。だが未来は流動的だし、もしかしたら…とペッパーも期待はしたのだ。が、毎晩トニーに抱かれているのに一向にそういう兆しがないのだから、これはやはり2年後に…という未来は変わりないのでは…と反論しようとしたペッパーだが…。
「よし!では早速…」
ペッパーを抱き上げたトニーは、彼女にキスをしながら寝室へと向かった

「ただいま!」
20年後の世界に戻ってきたモーガンは、ラボを見渡した。出発した時刻のほんの数分後に戻ってきたのだが、もしかしたら未来か変わっているかもしれないと期待したのだが、自分が出かけた時と、何の変わりもなかった。
「そうだよな…。変わってる訳、ないか…」
自分が生きている世界と、20年前の世界の未来は別物なのだ。変に期待するなよなと、首を振ったモーガンは、過去へ行ったことは母親には黙っておこうと、タイムマシンを隠すとラボを後にした。
が、ラボからの階段を駆け上がると、リビングから楽しそうな笑い声が…それも複数の声が聞こえるではないか。
「え…どういうこと…」
そっとリビングを覗くと、ソファには母親が座っていた。そしてその隣には、背を向けた男性が…。
その背中には見覚えがあった。つい先程まで会っていた、『彼』の背中だったから…。
モーガンは心臓がドキドキし始めた。
もしかしたら…奇跡が起こったのかもしれない。だが、違っていたら…と思うと、怖くて声を掛けることができない。
足が震えてまともに歩くことができない。それでも何とか前へ進もうとモーガンが一歩前へ踏み出した時だった。
男性が振り返った。
それは、あの日、最後に笑顔で出かけていった父親よりも、15年分年老いているが、確かにトニー・スタークだった。
「父さん……」
掠れた声しか出なかった。じわっと浮かんだ涙は、すぐにポタポタと頬を伝わり、顔を濡らしていった。
黙ったまま立ち上がったトニーはゆっくりとモーガンに近づくと、黙ったままの息子を力一杯抱きしめた。
「パパ……」
トニーに抱きつき号泣する息子に、ペッパーは首を傾げた。
「あら?どうしたの、モーガンったら…。さっきまでパパと話してたのに…」
泣き続ける息子にペッパーは不思議そうな顔をしているが、トニーは静かに首を振った。
「いいんだ、ペッパー」
そう言うと、トニーはモーガンの背中をゆっくり撫でた。
「約束通り、20年後に会えたな、モーガン…」

***
(おまけ)

2年後。
分娩室に元気な産声が響き渡った。
「スタークさん、おめでとうございます。元気な男の子ですよ」
ペッパーの汗を拭ったトニーは、彼女にキスをすると、真っ赤な顔をして泣き続ける息子を看護師から受け取った。
「モーガン、ようやく会えたな」
柔らかな頬を突くと、モーガンは次第に泣き止み、まだよく見えぬであろう瞳をトニーに向けた。
「しかし…ちゃんと2年後に生まれるなんて…。お前が来てから、毎日パパとママがどれだけ頑張ったと思ってるんだ?」
「トニー」
呆れたように目を回したペッパーに、トニーは眉を吊り上げた。
「そうだろ?毎晩毎晩、君とセック…」
と、ペッパーが『それ以上は、人前で言わないで』というように、咳払いをした。
肩をすくめたトニーは息子をペッパーに手渡すと、ペッパーの肩を抱き寄せた。
「律儀なところは、ママにそっくりだな」
「そうだといいけど」
2年前に未来からやった来た息子は、トニーそっくりだったのだ。あの時のことを思い出したペッパーは、くすくす笑いながら、トニーの肩に頭を置いた。
と、その時。モーガンがトニーの指を握りしめた。と同時に、トニーは2年前のモーガンの言葉を思い出した。
『父さんは…トニー・スタークは5年でも10年でも生き残るから』
彼の言っていた3年後に何が起こるのか分からない。だが、その出来事を出来るだけ回避しようと、ペッパーの妊娠が分かった後、アイアンマンからは完全に引退した。
「大丈夫さ、モーガン。今度は何があっても、お前のそばから離れないからな…」
そう言うと、モーガンは笑ったように見えた。

【END】

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