A boy who came from the future.⑧

眩い光が消え、スティーブとクリントは目を擦った。
モーガンの15年間を垣間見た2人…いや、ストレンジを入れ3人は、胸が張り裂けそうになった。
そのモーガンは、トニーの手を握りしめたまま、声を押し殺して泣き続けている。
「スタークはお前に復讐を望んでいたと思うか?」
労わるようなストレンジの声に、モーガンは父親のことを考えた。

父親を突然奪われた悲しみと怒り、それだけに今までは突き動かされていた。が、過去に来て、たった3日だがトニーと過ごし、もし父親が生きていたらこうだったのだろうかと感じる中で、そして先程父親が怒りの刃先を自ら受け入れたことで、ようやく気づいた。父親はきっと復讐ではなく、自分の人生を楽しく生きろとずっと言い続けていたのではないか…と。

首を振ったモーガンは頭を抱えこんだ。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
顔を上げたモーガンは、涙で濡れた瞳でスティーブを見つめた。
「スティーブおじさんも…ごめんなさい…。おじさんは…パパが死んでから、ずっと俺のこと、息子みたいに可愛がってくれたのに…。それなのに、ずっと恨んでてごめんなさい…」
今や消えそうになっているモーガンに、何とかしろとスティーブは非難めいた視線をストレンジに送った。
頷いたストレンジはアガモットの眼を取り出すと、モーガンに向かって微笑んだ。
「スタークの息子、二度と過ちを起こすなよ」
すると時間が巻き戻り始めた。
モーガンの剣がトニーに突き刺さる直前に…。

さっと後ろに下がったおかげで、剣はギリギリのところで、トニーに突き刺さらずにすんだ。
「モーガン…」
ほっとしたようなトニーの表情に、モーガンはくしゃっと顔を歪めた。
「ごめんなさい…父さん…ごめんなさい…」
ボロボロと大粒の涙を零し泣きじゃくる息子を抱きしめたトニーだが、彼自身は何が起こったのか覚えていなかった。だが魔法使いが息子を救ってくれたらしいということだけは分かったので、彼にしては珍しく素直に礼を言うことにした。
「ストレンジ、礼を言うぞ。息子を救ってくれた。ありがとう」
肩を竦めたストレンジから、スティーブとクリントに視線を移したトニーは、2人に向かって頭を下げた。
「何というか…息子がすまなかったな」
スティーブとクリントも、何も覚えていなかった。だが、2人はモーガンが15年間、辛く悲しい思いをし続けてきたということだけは覚えていた。そのため、頭を下げ続けるトニーに頭を上げるよう言い続けた。
が、ストレンジだけは全て覚えているので、彼はよかったと安堵の息を吐くと、ポータルの中へ消えていった。

「…で、5年後に何があるんだ?」
結局5年後に何が起こるのか、当事者であるトニーたちは分からずじまいだ。
「それは言えない」
今話せば5年後の事件は回避出来るだろう。だが、モーガンは、この時系列の世界では、きっとトニー・スタークは生き残るという妙な確信を持っていた。
「でも、きっと大丈夫。父さんは…トニー・スタークは5年でも10年でも生き残るから」
自信満々にそう告げる息子の髪をくしゃっと撫でたトニーは、スティーブとクリントと顔を見合わせると、息子の背中をぽんっと叩いた。

⑨へ…

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