A miraculous encounter②

マリブの岸壁に建つスターク邸は、映画やテレビでしか見たことがないような豪邸で、初めて目にする世界にペッパーは目を白黒させた。
「社長はこんな凄いお家に一人でお住まいなんですか?!」
トニー・スタークが独身であることは周知の事実なので、第一声がそんな言葉なのは馬鹿げているのかもしれないが、苦笑したトニーは鼻の頭を掻いた。
「あぁ、残念ながら、ずっと一人暮らしだ。人生を共に過ごしたいと思うような女性には、未だかつて会ったことがないしな…」
寂しそうに笑ったトニーだが、次の瞬間、彼の腹はグーっと盛大に音を立てた。
「何か作りましょうか?」
「頼む」
クスクス笑ったペッパーは、トニーを介助しようと手を握りしめた。と、トニーが背中を震わせた。彼女と手が触れた瞬間、彼は今まで感じたことのない何かを感じたのだ。だが、今の彼にその正体が分かるはずもなく、トニーは黙ってペッパーの手を握り返した。

ペッパー・ポッツの料理の腕前は相当なものらしく、30分もするとキッチンにはまるでレストランのような匂いに包まれた。
残念ながら目が見えないのでどんな料理が並んでいるか分からないが、美味そうな匂いにトニーは早速手を伸ばそうとした。が、スプーンは虚しくも空を切ってしまった。
「社長、貸してください」
トニーからスプーンを取り上げたペッパーは、スープをすくうとトニーの口元へ運んだ。途端に口の中に広がる美味に、トニーは包帯の下で目を丸くした。
「美味い」
「本当ですか?」
トニー・スタークのような人物に自分の料理が口に合うだろうかと心配していたペッパーは、その言葉に顔を輝かせた。
「あぁ。それに、誰かの手作りの料理を食べたのは、久しぶりだ」
美味しいと連発しながら料理を食べるトニーだが、ペッパーは首を傾げた。というのも、トニー・スタークは大勢の女性と関係があるはず。それなのに、料理の一つも作ってくれる女性はいないのだろうか…と。
(でも、そういう方がいらっしゃるなら、私に世話をしてくれと頼まないわよね…)
どうやら噂で知っている彼と実際の彼は違うようだ。これから短いながらも共に過ごすのだから、徐々に本当の彼について知ることができるだろうと考えたペッパーは、トニーの口元に料理を運んだ。

 

「ところで、ポッツくんの年はいくつだ?」
夕食の後、お互い名前しか知らないのだから…と、リビングに移動した2人は話をすることにした。
とりあえず年齢から…と、こう切り出したトニーに、ペッパーはこくんと頷いた。
「はい、23です」
声の感じから推測して年下だと思っていたが、7歳も年下だったとは…。大学を卒業して2年目だろうが、年の割にしっかりしているペッパーに、ますます興味の湧いたトニーは、もっと彼女のことを知りたくなった。
「ということは、入社して2年目くらいか?」
差し障りのないことから…と思いそう聞くと、ペッパーは首を振った。
「いえ。1年目です。実はこちらに就職する前に、別の会社に勤めていたんですが…」
言葉を濁したペッパーに、トニーは眉をひそめた。
「前の会社で何かあったのか?」
「はい…実は…」
ペッパーは言葉を選びながら話し始めた。

入社してすぐにも関わらず、どういう訳だか社長に気に入られ、秘書に抜擢された。が、向こうは仕事の関係以上のことを求めてきた。そんな気はないと何度も断ったが、次第にストーカーまがいなことをされ始めた。終いには夜道で後を付けられ、怖くなって即退職したというのだ。

「だから催涙スプレーを持ち歩いてたのか?」
そういう経緯があったから、彼女は催涙スプレーを振り回したのだ。納得したように小さく唸ったトニーに向かって、ペッパーは申し訳なさそうに頷いた。
「はい…」
そのストーカーまがいの社長はスターク・インダストリーズにはいないのに、あの時は夜道をつけられた恐怖が蘇り、思わずスプレーを撒いてしまったのだ。そのせいで、スターク社長は目を負傷してしまったのだから、とんでもないことをしてしまったと何度目かの後悔に襲われたペッパーの目には涙がじんわりと浮かんできた。
彼女が泣き出しそうだと気配で気づいたトニーは、その場の雰囲気を打破しようとわざと明るい声を出した。
「で、その男にも催涙スプレーをぶっかけたのか?」
心做しか楽しそうなトニーに、ペッパーは顔を上げた。
「いえ、さっき初めて使ったんです」
「ということは、私が初めての男だったんだな」
ははっと笑ったトニーにつられて、ペッパーにも笑顔が零れた。クスクス笑い始めたペッパーの声に、トニーは自然と本音を零した。
「おかげで君と知り会えた」

そしてIM1へ続く…版

このまま恋人になってしまったら…版(R-18)

7歳差なのは、私が年の差CP好きなので(;^ω^)

2005年(トニー30歳、ペッパー23歳)設定です。

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