「2008年って、いつから用意してたの?」
電撃発表となった会見の後、ようやく2人きりになると、ペッパーは指輪を見つめながらそう尋ねた。
「アイアンマンだと名乗った後、買いに行った」
「私の気持ちを確認せずに?」
あのアフガニスタンでの出来事で自分の本当の気持ちを確認したという話は、恋人になってから何度も聞いていたが、まさかその時点で婚約指輪まで購入していたとは知らなかった。付き合い始めてからも、トニーの口から最近まで『結婚』について出たことはなかったのだから…。
「君の気持ちは分かっていた。パーティーで君と踊った時、同じ気持ちだと確信したんだ。だからプロポーズする機会はずっと伺っていた。10年以上かかったが、ようやくこの指輪も日の目を見たって訳だ」
そうだろ?と言うように、ペッパーの頬にキスをしたトニーは、人には滅多に見せない蕩けるような笑みを浮かべた。
10年以上、彼の親友のポケットに入っていたというのは本当かどうか疑わしいが、それでも彼がずっと自分と生涯を共にしたいと考えてくれていたことは、本当に嬉しかった。
だが、先程の会見では、婚約したという事務的な報告のみ。マスコミの前で公開プロポーズをしようとは、流石のトニーも思わなかったのだろうが、仲直りしてからどの時点での『ずっと一緒にいよう』という言葉が彼なりのプロポーズだったのだろうか…。
が、こういうことは一生に一度のことなのだから、ペッパーとしてはきちんとトニーの言葉が欲しかった。
「でも、ちゃんと言葉にしてもらってないわ」
この際だからきちんとしてもらおうと、わざとらしく眉を潜めながらそう言うと、あぁと声を出したトニーは頷くと、ペッパーから指輪を抜き取った。そしてその場に跪くとペッパーに向かって指輪を差し出した。
「ヴァージニア・ポッツさん。君は私の全て。君なしでは私は生きていけない。だから結婚して下さい」
真剣な表情を作っているが、その口元は喜びを隠し切れないというように笑っている。距離を置いていた間に起こったあの事件で心身ともに傷を負ったトニーが、今こうやって心から嬉しそうに笑っている。こんなに幸せなことはあるだろうか。
「ねぇ、トニー。私もね、あなたがいないと生きていけないの。だから、ミセス・スタークにして下さい」
そう言いながら左手を差し出すと、手の甲にキスをしたトニーは指輪を元の位置に丁寧に戻した。
「あぁ、喜んで。ミセス・スターク」
立ち上がったトニーはペッパーをぎゅっと抱きしめると、正式な婚約祝いをしようと、ペッパーを連れて部屋を後にした。