Love of the mermaid⑦

その日、ペッパーより先に達してしまったトニーは、ベッドに倒れ込んだ。共に暮らし始めて1ヵ月。この頃になると、トニーは寝食も忘れペッパーを求め続けた。
どこか青白い顔をしたトニーは、肩で息をしているが、達する直前だったペッパーは不満げに頬を膨らませると、トニーの身体に馬乗りになった。そして彼にキスをし始めた。口付けが深くなるにつれ、トニーの顔からは生気が失われ、瞳から光が消えた。無表情になったトニーは、ペッパーの腰を掴むと下から突き上げ始めた。
ズンっと身体の奥深くを駆け巡った快楽は、ペッパーの求めているものだった。
狂ったようにトニーを求めるペッパーの声に合わせて、まるで操り人形のようにトニーは彼女を突き上げ続けた。ペッパーの声にのみ従うトニーの様子は明らかに異常だったが、快楽に没頭しているペッパーは気づいていなかった。
やがて、ガクガクと全身を震わせたペッパーは、トニーの胸元に倒れ込んだ。同時にギュッと締め付けられたトニーは、大きく息を吐くとペッパーの奥深くに精を吐き出した。するとペッパーの両脚が光に包まれた。が、ペッパーの身体をまさぐっていたトニーの腕は、力なくベッドに崩れ落ちた。

それから数日後。
連絡しても返事もないトニーが心配になったローディが、スターク邸にやって来た。
が、ラボを覗いても人影は見当たらない。それでも彼の居場所はここだろうと考えたローディは
「トニー?いるんだろ?」
と声を掛けた。すると、部屋の隅のキッチン辺りから、くぐもった声が聞こえた。いつものトニーらしからぬ反応に、ローディは慌てて声のする方へ向かった。するとトニーはソファーに寝転んでいたが、彼の姿にローディは言葉を失った。数日前よりも窶れたトニーは、酷い顔色をしていたのだ。
「トニー?!」
傍に跪いたローディは、目を閉じたままのトニーの手を握りしめた。が、いつもは力強く温かい親友の手は冷たく、力なく握り返してきたではないか。
「トニー、大丈夫か?しっかりしろ!」
ローディの声に薄らと目を開けたトニーは、大きく深呼吸するとゆっくりと起き上がった。が、眩暈でもするのか、頭を抱えたトニーは、苦しそうに咳き込んだ。
明らかに具合が悪そうなトニーに、ローディは病院は行くよう勧めた。が、トニーは
「疲れてるだけだ。大丈夫、心配するな」
と、頑として首を縦に振らなかった。

ローディが帰った後、トニーは再びソファーに寝転んだ。
リアクターの調子が悪い訳ではない。それなのに、日に日に体調は悪くなり、今日は起き上がっておくことすら出来ない程だ。
「私の身体は…一体どうしたんだ…」
ふぅと深呼吸したトニーは、体調不良の原因を探ろうと記憶を辿ろうとしたが、思い出すことが出来ない。頭の中で常に何かが蠢いている。その何かに掻き回されているのか、トニーは1日の殆どの出来事を覚えていなかった。いつ食事をしたのか、いつ眠ったのかすらも覚えていなかった。
(ペッパーに聞いてみるか…)
彼女に聞けば思い当たる節があるかもしれないと、ペッパーの姿を思い浮かべた時だった。

ドクンっ!

胸がギューっと締め付けられ、息苦しくなり始めたトニーは胸を掴んだ。息が出来なくなり、目を見開いたトニーは何とか呼吸しようと喘いだ。が、それに反するように、下半身はどんどんと熱を持ち始めた。途端にトニーはペッパーが欲しくて堪らなくなってきた。
意識が遠のき始めトニーだが、おもむろに立ち上がると、ふらふらと階上へと向かった。

寝室に向かうと、ペッパーがシーツを交換していた。
「トニー、どうしたんです?」
やけに顔色の悪いトニーは、無表情のまま近づいてきた。そしてペッパーに抱きつくと、舌を絡めるようにキスをし始めた。トニーに応えるようにペッパーも自ら舌を絡めながら、彼の背中に腕を回した。蕩けるようなキスにペッパーはお腹の奥が疼き始めた。
「トニー……お願い…」
キスの合間に囁くと、トニーは黙ってペッパーをベッドに押し倒した。

翌朝。
朝食の準備をしていたペッパーは時計を見上げた。
8時過ぎたのに、トニーはまだ起きてこない。今朝は9時から会議があると言っていたのだから、いい加減に起こさないと遅刻してしまう。
起こしに行こうとしたその時、トニーがキッチンへと姿を表した。だが、足元はふらついており、息苦しいのか胸に手を当てている。
「トニー?」
目は虚ろで焦点が合っていないトニーは、ペッパーの声が聞こえていないのか、言葉一つ発しない。
明らかに様子のおかしいトニーに、ペッパーは慌てて駆け寄ろうとした。が、壁に手を付き、ゆっくりと歩いていたトニーだったが、その場に倒れてしまった。
「トニー!」
身体を揺さぶったペッパーだが、トニーは何度呼びかけても目を覚まさない。
トニーの全身をスキャンしたJ.A.R.V.I.S.は急いで救急車を要請した。J.A.R.V.I.S.が人間ならば顔色を変えただろう。トニーの心臓と呼吸は停止していたのだから…。

⑧へ…

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