Love of the mermaid⑥

それから3週間が経った。
人間の姿になったペッパーを楽しませようと、トニーは彼女をあちこちに連れて行った。初めて見る人間の世界をペッパーは心の底から楽しんでおり、彼女の笑顔を見たいがために、トニーも忙しい中、彼女と過ごす時間を大切にしていた。

「ボスと結婚しなかったら、泡になって消えたりするんですか?」
「それはおとぎ話だろ。大丈夫だ。それに結婚するつもりだ」
今日も土産にと持ってきたプリンを頬張りながら、トニーとハッピーは話していたのだが、その会話を聞きながらペッパーは首を傾げた。おとぎ話とは一体どういうことなのだろうか…と。
だが、それよりも、ペッパーの心に引っ掛かっていたこと。それは『人間の姿を保つには、あの男が必要だ』という言葉。
どういう意味かは分からないが、トニーのそばから離れると、また人魚に戻ってしまうのだろうと、ペッパーはあまり深く考えていなかった。

夕方になりハッピーが帰宅すると、ペッパーは夕食の支度を始めた。
見よう見真似で始めた料理だが彼女には才能があったのだろう。トニーだけではなく、ハッピーやトニーの親友ローディが大絶賛するほど、ペッパーの腕前はみるみるうちに上達していた。
今日は何を作ろうかと冷蔵庫の中を物色していたペッパーだが、突然背後からトニーに抱きしめられ飛び上がった。
「と、トニー?!」
ペッパーをぎゅっと抱きしめたトニーは、首筋に唇を這わせながら耳元で囁いた。
「君が欲しくて我慢できない」
「で、でも…ご飯作らないと…」
トニーが自分のことを求めてくれるのは嬉しい。最初は夜だけだったが、最近では家で2人きりの時は、トニーは常に求めてくるのだ。が、日に日に異常なまでに求めてくるトニーに、ペッパーは正直戸惑っていた。最近では食事よりも優先してくるのだから、少し痩せてしまったトニーがペッパーは心配でたまらなかった。
そのため、今日こそはきちんと食事を取らせようと心に決めていたペッパーだったが、あれよあれよという間に寝室に連れて行かれ、気が付いた頃にはトニーの腕の中に閉じ込められていた。

ペッパーが人間になった日、男はトニーの前にも姿を現していた。トニーの頭を掴んだ男は、彼に無理矢理何かを飲ませた。そして男は囁いた。『彼女に身を捧げよ…』と。どういう事かとトニーは男に問おうとしたが、頭の中に何かが入り込んできた。
『お前たちが交われば交わるほど、私は力を得る。その力を彼女に与え、人間の姿を保ってやる。己の命を削って交わり続けろ。それが彼女に見初められたお前の使命だ…』
頭の中に入り込んで来たものは、繰り返しそう囁いた。
彼女とは生涯を共にしたいが、自分が死んでしまっては意味がない。そのため最初は抵抗していたトニーだが、次第に抵抗できなくなり、彼は力なく頷いた。ニンマリと笑った男は何か握ったままトニーの胸元に手を当てた。と、男の手がトニーの胸を貫いた。心臓を鷲掴みにした男は握っていた物を置いたが、トニーは抵抗できず成すがままだ。
『契約完了だ 』
トニーから手を離した男は、高笑いを残したまま姿を消した。

その出来事をトニーは覚えていなかった。だが、ペッパーが人間になって以来、トニーはペッパーが欲しくて堪らなかった。夜だけではなく、一日中彼女と愛し合いたくて我慢出来なかった。異常なまでの彼女への性欲は、自分では抑えることができなかった。彼女はやはり人間とは違うのだろう、トニーがいくら求めても参ることはなかった。そればかりか、身体を重ねれば重ねる程、彼女は日々美しくなっていった。それでも最初の数日は、夜だけと我慢をしていた。が、欲を抑えることができず、仕事すらも手につかなくなったトニーは、日夜問わずペッパーを求めるようになった。
あの男の言葉が記憶にないトニーは、自分の身体の変化に戸惑うしかなかったが、最近では記憶すらもあやふやなのだから、どうすることも出来なかった。

⑦へ…

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