Kiss the Teacher~春編2

「先生?今よろしいですか?」

あの日以来、トニーに対し遠慮がなくなったのか、ポッツは頻繁に顔を覗かせるようになった。勉強熱心な彼女は、時にトニーを唸らせるような質問をすることもあった。大量の資料に埋れた机で肩を並べ勉強した後、二人はお互いのことを話すのがいつしか日課となっていた。

今日も分からないところがあると、放課後トニーの部屋にやって来たポッツ。嬉しそうに笑った彼女の笑顔にドキっとするトニー。
そう、いつしかトニーはヴァージニア・ポッツのことを一人の女性として愛するようになっていたのだ。

「先生、いつも教えて頂いているんで…お礼です。私が作ったんで、味は保証しませんが…」
帰り際になり、カバンの中から取り出した物をポッツはトニーの手に押し付けた。見ると、綺麗にラッピングされた手作りのクッキー。
「早速頂いてもいいか?腹が減ったんだ」
ポッツに座るよう促したトニーは、破れないように袋を開けると、クッキーを一枚口に放り込んだ。
「美味い!ポッツ君、君は料理も上手いんだな!」
次々とクッキーに手を伸ばすトニーを見たポッツは、安心したように息を吐いた。
「本当です?よかった…。で、でも…め、迷惑ですよね…?ごめんなさい…。先生にはきっと素敵な方が―」
しょんぼりと俯いたポッツを見たトニーは確信した。彼女も自分に好意を抱いてくれていると…。自分から想いを伝えればいいものの、どうも素直になれないトニーは、彼女に仕掛けてみることにした。
「は? 俺にか?いないよ、恋人は」
トニーの言葉にポッツは椅子から飛び上がった。
「え⁈い、いないんですか?先生、こんなに素敵なのに!」
「はは…。残念だが、募集中だ…」
トニーの顔を穴があくほど見つめていたポッツだが、彼女もこれをチャンスと捉えたのだろうか…、勇気を振り絞って想いを伝えてみようと決意した。
「せ、先生…。私…、あ、あの…」
恥ずかしさのあまりトニーの顔を見ることのできないポッツは、目を伏せ話し始めた。
「わ、私…せ、先生のこと…。ずっと好きなんです。この学校に入学して、先生にお会いした時から…ずっと好きです。私…い、今までこんな気持ちになったことなくて…。どうすればいいか分からなかったから、なかなか先生に声を掛けられなくて…」
ジッと自分を見つめているトニーの視線を感じたポッツだが、トニーが何も発しないため、次第に目には涙が溜まり始めた。
(やっぱり…ダメだった…)
ポッツが諦めようとしたその時、ポッツの身体は力強い腕に抱きしめられていた。
顔をあげたポッツの目の前には、嬉しそうなトニーの顔。トニーは照れ臭そうに話し始めた。
「ポッツ君…その…。俺も君のことがずっと気になっていた。つまり…俺は、君のことが好きだ。君のこと、大事にする。だから…そばにいて欲しい…」
トニーにぎゅっと抱きしめられ、真っ赤になったポッツは顔をあげられず頷いた。
しばらく抱き合ったままだったが、やがてトニーが言葉を発した。
「何と呼べばいい?」
「え?」
「君のこと…ヴァージニアと呼んでいいか?」
指先で顎を持ち上げられたポッツは、真剣な顔をしたトニーに向かって微笑んだ。
「ペッパーって呼んで…」
「ペッパー…好きだ…」

頬を優しく撫でたトニーは、唇を近づけた。

初めてのキスは夕日の差し込む学校の部屋で。それは唇が触れる程度の優しいキスだった。

3へ…

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