Until the last moment 番外編①

《トニー入院中の合間のお話》

1ヶ月も経つと、トニーは元気を取り戻し、まだ身体は自由に動かすことはできないが、病室からはペッパーやルーカスと語り合う楽しそうな笑い声が聞こえるようになっていた。
すっかり元気になったトニーにもっと元気になってもらいたいと、ここ数日、ペッパーはルーカスが産まれた時から今に至るまでを写真やビデオを見せ語っていた。
自分の知らない息子の様子に聞き入っていたトニーは写真を手に取るとため息をついた。
「出来ることなら、戻りたいな…。ルーカスが産まれる前に…」
そう言って寂しそうに笑ったトニーに、もっと早く知らせればよかったと胸がチクリと傷んだペッパーは、ベッドに腰掛けると甘えるようにトニーの肩に頭を乗せた。
「ねぇ、聞いていい?」
「ん?」
写真をテーブルに置いたトニーはペッパーの肩を抱き寄せた。
「あなたの遺言、読んだの。どうして私だったの?」
あのトニーからの手紙を読んで、ずっと気になっていた。あの手紙を書いたのは2年ほど前とハッピーから聞いてから尚更のこと。どうして別れた女に全財産を譲るなんて書いたのだろうかと、ペッパーはずっと不思議に思っていたのだ。
ふぅと深呼吸したトニーは、ペッパーの髪を弄び始めた。
「君は私の全てだからだ。君と別れてからも、私が愛していたのは君だけだったからだ。それに、君には十年以上苦労をかけてきた。だからせめてもの報いと思って…」
離れていた4年を思い出したのか、苦しそうに顔を歪めたトニーは、ペッパーをギュッと抱き寄せた。
顔を押し付けられた胸元からは、トニーの鼓動が聞こえてきた。いつもより少しだけ早い鼓動が…。それは彼が生きているという証。自分のそばにいてくれるという証なのだ。
もしあの時、彼が頑張ってくれなければ、彼を永遠に失っていたかもしれない。あんな思いはもう二度としたくない…。
「トニー…もう、絶対に遠くに行かないで…」
涙ぐんだ声で囁かれたその言葉に、トニーは力強く頷いた。
「あぁ。絶対に君のそばから離れない…」
ペッパーの首元にキスをしたトニーは、そのまま唇へと滑らせた。
「ん…」
甘く蕩けるようなキスに、ペッパーはその先を求めるようにトニーの頭をかき抱いた。
「ハニー…」
キスの合間に甘ったるい声で囁かれると、ペッパーはもうどうしようもなく彼のことが欲しくて堪らなかったが、その感情を隠すようにトニーのことを可愛らしく睨みつけた。
「…昨日もしたでしょ?」
ルーカスが幼稚園に行き不在なのをいいことに、昨日の午前中はずっと愛し合っていたのだ。
「4年も君のこと、抱いてないんだぞ?」
眉を吊り上げたトニーは、まるで『君だってそうだろ?』と言うように、ペッパーのスカートを捲し上げると太股に指を滑らせた。
「待って…この後、お迎えに行かなきゃいけないの…」
ストッキングを破かれたら大変だ。昨日は何も考えずトニーのなすがままになっていたら、ストッキングは破かれ、下着はびしょ濡れになり、挙げ句の果てにスカートには染みができ、大惨事のままお迎えに行くはめになってしまったのだから…。誰かに何か言われるのではとヒヤヒヤしていたペッパーだが、幸いなことに誰も気づかなかったのでよかったのだが…。
そこで、ベッドから降りたペッパーは、下着ごとストッキングを脱ぐと、トニーの上に跨った。
とは言っても、トニーはまだ足を動かすことのできない。彼のパジャマをずらしそそり立つものを手に取ったペッパーは、身を屈めると先端にチュッとキスをした。そして身体を起こすと自分の秘部に先端を当てると、ストンと腰を落とした。
奥まで入り込んできた熱いトニーに、ペッパーは声を出しそうになり唇を噛みしめた。

トニーとの営みは4年という歳月を感じさせない程、最高だ。
トニーの胸板に両手を置いたペッパーは、彼が動けない分自分が…と、必死に腰を動かしている。
病室に、ベッドがきしむ音と、2人の押し殺したような息遣いだけが響き渡り、誰がいつ来てもおかしくない状況に、2人はあっという間に高みに上り詰めてしまった。

甘い声を上げて崩れ落ちたペッパーをぎゅっと抱きしめたトニーは、彼女の中で果てると、ほぅ…と息を吐いた。
耳元に掛かるトニーの荒い息遣いに、顔を胸元に押し付けたペッパーは目を瞬かせた。
「トニー…あなたって、本当に最高ね…」
最高の気分なのはトニーも同じだ。ペッパーはいつだって自分のことを全て受け入れてくれ、それは4年間離れ離れになっていたとしても変わらないのだから…。
「ずっとこうしておきたい…」
赤毛の髪にキスを落とすと、ペッパーはクスクスと笑みを漏らした。
「私も…。でも、そろそろお迎えに行かなきゃ…」
もうそんな時間なのだろうか。この後もルーカスを連れてペッパーはやって来るのだが、男と女でいられる時間はもうすぐ終わりだ。
迎えの時間だと言いながらも名残惜しそうに締め付けてくるペッパーに、もう少しだけ時間を引き延ばそうと、トニーは先日から聞こうと思っていた話題を口に出した。
「そうだ。仕事、どうするんだ?」
トニーが入院して以来、ペッパーは出来るだけ彼の傍にいるため、仕事のシフトをかなり減らしてもらっていた。それまでほぼ皆勤だったペッパーなのだから、雇い主は何事かと理由を聞いて来た。そこで、『息子の父親が重傷を負い入院中』と伝えると、雇い主は余りまくっていた有給を使っていいからそばにいてやれと、快く休みを取らせてくれたのだ。
「今はお休みを頂いてるの」
だがいい加減戻らなければ、職場の皆に迷惑かかるわよね…と考えていたペッパーに、トニーは彼女と再会し思いが通じ合ってからずっと考えていたことを告げることにした。
「戻ってこい」
「え…」
それはつまり、よりを戻したのだから、またスターク・インダストリーズで働けということかしら…と考えるペッパーに、トニーは先ほどよりも甘ったるい声で囁いた。
「君さえ良ければだが。NYへ戻ってこい。ルーカスのこともちゃんとしてやりたいんだ。父親として…。それから、これからずっと一緒にいたい。だから君とのことも…」
関係をきちんとしたい…つまりそれは…。
「ねぇ、それって…」
顔を上げたペッパーは唇を震わせた。聞き間違えでなければ、彼は自分と一生を共にしようと言っているのだろうか…。
目にうっすらと涙を浮かべたペッパーに、トニーは眉を吊り上げた。
「一応、プロポーズのつもりだ」
やはりそうだった。はっきり告げてくれればいいのに、遠回しな言い方しかしないのは、彼らしい。
「プロポーズ?この状況で?」
繋がったままの状態なのだから、そんな状況も彼らしいと言えば彼らしいのだが…。
クスクス笑い出したペッパーに、トニーはわざとらしく目をクルリと回した。
「何だ?もっと感動するシチュエーションが良かったか?」
もしかしたら、彼も一応は感動するシチュエーションも考えていたのかもしれない。だが、こんな状況で結婚の約束をするのも、自分たちらしくていいのかもしれない。
それでもきちんと言葉が欲しかった。一生に一度のプロポーズなのだから。
「いいえ。でも、きちんとあなたの言葉が欲しいわ」
肩を竦めたペッパーに、やれやれと首を振ったトニーは、顔を見られるのが気恥ずかしいのか、ペッパーの頭を抱え込むと自分の方へ引き寄せた。
「ペッパー、結婚してくれ」
押し付けられた耳元に、トニーの鼓動が聞こえた。ドキドキしているのか、いつもよりも早い鼓動を聞きながらペッパーは目を閉じた。
「はい」
と、トニーが安心したように息を吐いた。
(トニーでも緊張するのね)
途端にトニーが愛おしくなったペッパーは、彼の胸元にキスをし始めた。すると…。
「と、トニー…」
中でトニーがみるみるうちに大きさを増したのに気付いたペッパーは、頬を赤く染めた。
「まだ時間大丈夫か?」
申し訳なさそうに、それでいて期待した顔で尋ねるトニーに、時計を確認したペッパーは頷いた。
「あと10分くらいなら…」
「10分あれば十分だ」
ニヤッと笑ったトニーは、ペッパーの唇を奪うと、ぎゅっと腰を押し付けた。

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