1年後、ヴァージニアはまたあの部屋にいた。
いつもよりも上等な服を着た彼女は、ベッドに腰掛け、男の到着を待っていた。
1年ぶりの再会と思うと、胸の高まりが抑えきれない。数える程しか会ったことのない男だが、彼の存在はヴァージニアの中で、大きくかけがえのないものになっていたのだ。
(どんな顔をしてお会いすればいいのかしら…)
心臓はドキドキといつもよりも早いペースを刻んでおり、気持ちを落ち着かせるようにヴァージニアは大きく深呼吸をした。
と、ドアが開いた。現れたのはあの男だった。今日は外套も被っておらず、手にはいくつもの大きな袋を持っていた。
「お待ちしておりました」
恥ずかしそうに微笑んだヴァージニアに男は目を見張った。1年ぶりに会った彼女はすっかり大人びていたからだ。
美しく成長したヴァージニアから目が離せなくなった男は、床の上に荷物を置くと、彼女の横に腰を下ろした。
「すっかり大人になったな」
嬉しそうにヴァージニアを見つめた男は、頬にそっと手を添えた。
「私以外の…」
男の言葉を遮るように、そっと手に触れたヴァージニアは目を瞬かせると、はにかんだ笑みを浮かべた。
「あなた以外の男の方とは、2人きりになっておりません」
満足そうに頷いた男だが、無意識なのだろうが、先程からヴァージニアは上目遣いに自分を見つめてくるのだ。何もかもが初めてであろう彼女を怖がらせてならないと分かっているが、感情の方が打ち勝ってしまった男は顔を近づけるとヴァージニアの唇を奪った。
触れる程度の口付けだったが、ヴァージニアは身体を震わせた。慌てて唇を離した男は、目を潤ませているヴァージニアを抱きしめた。
「無理強いはせぬ。だから、まずは1年分の話を聞かせてくれ。それから、土産がある。お前に似合いそうな服や靴持ってきた。気に入ってくれればよいが…」
男の背中にそっと手を回したヴァージニアは、彼の肩に顔を埋めると小さく頷いた。
結局今年も話をするだけで終わったのだが、少しだけ関係は進展していた。それは別れ際に軽くキスをするようになったこと。そして抱き合い眠りにつき朝を迎えるようになったこと。
男に少しだけ近づけただろうかと感じたヴァージニアだが、無常にも別れの日がきてしまった。
「…あなたと離れたくないです…」
男に抱きつきシクシク泣き始めたヴァージニアだが、今すぐ彼女を連れて帰りたいのは男も同じだった。
そこで今年も男は主人に提案した。ヴァージニアを連れて行きたいと…。
だが、主人は拒んだ。例年通りならば諦め1年分の金を支払うのだが、ヴァージニアの涙を思い出した男はしつこく食い下がった。が、主人は首を縦に振らなかった。仕方なく金を払った男だが、彼の口から出た言葉も昨年までとは違っていた。
「次はどこへ行く?」
いつもと違う展開に眉を顰めた主人だが、それほどまでにヴァージニアと離れたくないのかと苦笑した。
「スターク国へ行く予定だ。旦那も一緒に行くか?」
一瞬目を細めた男だが、首を振ると丁重に断り宿を後にした。
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