You’re The First, The Last, My Everything.~LA編③

震えるトニーをまるで子供をあやすように抱きしめていたペッパーだが、トニーはいつの間にか眠ってしまった。彼を起こさないように起き上がったペッパーは、服を着替えるとソファーに横になった。
(明日、しっかり話を聞かなきゃ…)
トニーが眠っているのを確認したペッパーは、病室の灯りをおとすと目を閉じた。

深夜、ペッパーはかすかな唸り声に気付き目を覚ました。
「トニー?」
立ち上がりベッドに近づくと、トニーは汗をかき、涙を流しながらうなされているではないか。まるであの時のように…。
「大変…」
慌てたペッパーは、トニーの身体を揺さぶった。
「トニー…トニー!」
小さく叫び声をあげてトニーが目を覚ました。真っ青な顔をしたトニーは、しばらく喘ぐように息をしていたが、ペッパーに気が付くと怯えた瞳を向けた。
「ペッパー…」
ガタガタと震える身体を抱きしめると、トニーはペッパーにしがみつくように腕を伸ばした。
「大丈夫…私が傍にいるわ…」
背中を撫でていると、トニーの震えが止まった。
「…一緒に寝てくれないか?」
ぽつりと呟いたトニーの額にキスをすると、ペッパーは微笑んだ。
「いいわよ。実を言うと私もあなたの隣で眠りたいって思っていたの」
小さく笑ったトニーは身体を移動させるとペッパーが横たわれるようにスペースを作った。トニーの隣に潜り込んだペッパーは、狭いベッドから落ちないように、そして彼の負担にならないように身体を密着させた。ペッパーの腰に手を回したトニーは、頬にキスをすると目を閉じた。だが、眉間に皺を寄せ苦悶の表情を浮かべていたトニーは、大きくため息を付くと目を開けた。心配になったペッパーは声を掛けた。
「トニー?どうしたの?」
「…眠りたくない。またあのひどい夢を見ると思うと…」
ため息を付いたトニーは、ペッパーに向かって無理やり笑みを浮かべた。
「ペッパー、君は寝ろ」
(これじゃあ、あの時と同じになってしまう…。今度はちゃんと向き合うって決めたのに…)
何があっても受け止めてみせると意を決したペッパーは、トニーの頬に触れるとじっと目を見つめた。
「いいえ。私も起きておくわ。ねぇ、トニー。あなたが話したかったらだけど…話してみて?誰かに心の内を話せば少しは楽になるかもしれないわよ?」
ペッパーの言葉にトニーの目に迷いが見え隠れし始めた。話せば彼女の前でパニックを起こすかもしれない…そうすれば、彼女に心配をかける…。
しばらく迷っていたトニーだが、彼女なら自分の全てを受け止めてくれるかもしれないと思い、話すことにした。
「長くなるが…いいか?」
「えぇ。時間はたくさんあるわよ」
ニッコリ微笑んだペッパーの笑顔にトニーは救われる思いがし、勇気を出して話し始めた。

「またあの夢を見た。今度はもっとひどい夢だ…」
ぎゅっと目を閉じたトニーの手をペッパーはそっと握りしめた。
「アフガニスタンで襲撃された時、若い兵士たちが目の前で命を落とした。私を逃がそうとしてくれた恩人もだ。みんな私のために…。私は何一つできなかった。ただ彼らの命が尽きるのを見守るしかなかったんだ…。そしてあの時…あのまま宇宙に取り残されて、君に別れを告げることなく死んでしまうかと思った。この間も言ったが、あの時も私は無力だった。この一年、君が傍にいてくれたから、私は壊れずにすんだのだと思う。だが、いつの日か自分の無力さを再び思い知る日が来るだろう。そしてその時、何としても守りたいのが君だった。今もそう思っている。今回の事件もそうだ。家を破壊された時も、君が苦しみを与えら れている時も…何もできなかった…。そして私にはもう何も残されていない。もし、今君に何かあっても、私は君を守ることができないんだ…」
思いを吐き出したトニーは、顔を伏せると口を噤んでしまった。
彼はNYの事件以前から…胸に傷を負って以来、ずっと一人で苦しんでいたのに…。私は気付いてあげることができなかった。今回のことも彼は自分に非がある と、自分が力不足だったからだと思っている。あの時…再会した時に笑顔を見せたのも、昨日笑っていたのも、私を心配させまいと、自分の気持ちを押し殺していたのに…どうして気付いてあげられなかったの?どうしたら、彼の苦しみを解き放ってあげられる?

「トニー、アーマーがないと不安?」
頭を撫でながらペッパーは尋ねた。昨日彼は『アーマーは繭だ』と言ったけど、もしかしたらそれも私のために言ったのかもしれない…。
だが、トニーは首を振るとペッパーの目をまっすぐ見つめて言った。
「いや、それはもう大丈夫だ。昨日も言ったが、アーマーは私の繭でしかなかったんだ。私にとって大切な物は君だ。君がいれば…」
零れ落ちそうになった涙を堪えるように、トニーは天を仰いだ。
「すまない…話が長くなったな。もう寝よう…」
ペッパーの頬にキスをおとしたトニーはペッパーの胸元に顔を埋めた。それは、彼が何か不安に思っている時…何かに怯えている時にする行動だと、ペッパーは 共に暮らし始めて気付いた。まるで母親の温もりを求めるように…。
彼は自分の胸の内を全てではないかもしれないけど、話してくれた。だから私も彼に対する思いを話さないと…。

ペッパーはトニーの頭を撫でながら、優しく語りかけ始めた。
「ねぇ、トニー。聞いてくれる?私にはあなたのことを守る力はないかもしれない。あなたは私に心配かけないように、自分の苦しみを抑え込もうとしているんでしょ?でもね、私にもあなたの喜びや悲しみ、苦しみは一緒に分かち合える力はあると思うわ。あなたのこと、支える力はあると思うの。あなたは私のことを 一生懸命考えてくれているわ。私も同じよ。あなたと一緒に幸せになりたいの。これからもずっと…。だから、一人で苦しまないで。今日みたいに、あなたが 思っていること、感じていること、全部話して?私には分からないこともあるかもしれない…。でも、一緒に解決の道を探しましょう?…ごめんなさい、うまく 言えないんだけど…」

ちらりと顔を上げたトニーは、遠慮がちに口を開いた。
「君は…私と違って君は完璧だ。昔からずっと完璧なんだ。だから君にできないことはない」
トニーの言葉に今度はペッパーが声を上げた。
「トニーったら!私のどこが完璧なの?私は欠点だらけよ?」
「いや、私にとっては、出会った時から君は完璧だ。私にはもったいないくらいに…。それに、君が好きになった男は、こんなに弱い男じゃないだろ?すまな い…」
相変わらず目を伏せたままぼそぼそと話すトニーが愛おしくなり、ペッパーは頭をぎゅっと抱え込んだ。
「トニー、あなたがそう思ってくれているのは嬉しいわ。でもね、私が完璧なのはね…それはあなたがいてくれるからよ。あなたが一緒にいてくれるから、私は 完璧になれるの…。あなたが受け止めてくれるから強くなれるの…。あなたがいないと、私は欠点だらけのオンナなのよ」
くすっと笑ったペッパーは、不思議そうな顔をしているトニーにキスをした。
「それとね、トニー。私はあなたの傍に何年いると思ってるの?あなたの優しさも強さも…それに弱さも、全部見てきたのよ?だからね、私が愛してるトニー・ スタークは、優しくて強いだけじゃない。我儘でさみしがり屋で泣き虫で…私のことばかり考えてくれてる人よ?」
「ペッパー…」
トニーの目に浮かんだ涙をペッパーは指でそっと拭った。
「だから、安心して?私にはあなたの全てを見せて?私には思いっきり甘えてくれていいの…。でも、他の女性に甘えたら許さないわよ?」
ウインクしたペッパーは、にっこりとトニーに向かって笑った。
「ペッパー…私には君が必要だ…。これからも、ずっと…永遠に傍にいてくれるか?」
泣きながら笑みを浮かべたトニーは、袖で顔を乱暴に擦った。
「当り前よ。私はね、あなたの傍を離れるつもりなんてないわ。だって、あなた以外愛せないんですもの…。あなたじゃなきゃ、満足できないの。だから、責任とってね?」
そういうと、ペッパーはトニーの唇を奪った。

昨日は失敗しちゃったけど、今度は彼のことを傷つけないわ。だって、彼のこと絶対に守るって決めたんだもの…。

4へ…

IM3後のトニペパ。自分の胸の内をペッパーに吐き出すトニー。トニーが弱り切ってて泣き虫になってしまいました(汗

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