えっちぃお題 090.背徳の楽園 より
***
「ポッツくん」
退室しようとしている背中に向かいそう呼ぶと、振り返ったペッパーは困ったように小首を傾げた。
「トニー、何度言ったらいいんです?もう、ポッツじゃありません」
くすくす笑みを浮かべたペッパーの左手には、銀色の光を放つ指輪が光っていた。
知ってるさ。君が1か月前に人妻になったのは…。しかも相手は私が知らない男。だからわざと『ポッツくん』と呼ぶんだ。私の前だけでは、昔のままの君でいて欲しいから…。
何故想いを伝えなかったのだろう。伝えなくても君だけは気持ちを分かってくれていると思っていたのだろうか…。
いや、自分の本心に気づかないふりをしていたのかもしれない。
だが、いざ彼女が他の男のモノになった今、後悔しか襲ってこない。
なぜ自分に正直にならなかったのだと…。
なぜ愛しているとはっきり伝えなかったのかと…。
ペッパーの首筋に見え隠れする赤い印にトニーの心はざわついた。
いっそのこと、このまま彼女を連れ去り、2人だけの世界に閉じ込めてしまおうか…。
そんなあらぬ考えを拭い去ろうと軽く頬を叩いたトニーに向かってクスっと笑みを浮かべたペッパーは、一礼すると部屋を後にした。
その夜。
歓喜の声を上げる女に、トニーは背後から一方的に欲をぶつけていた。女の名前は知らない。いや、知ろうとも思わなかった。トニーにとっての『女性』は、赤毛のかの女性だけだったから。
女が叫び声を上げた。全身を震わせた女が振り返った。オーシャンブルーの瞳にトニーは釘付けになった。なぜなら、彼が恋焦がれる赤毛の女性と同じだったから。
いつの間にか女はペッパーへと変わっていた。女の身体を搔き抱いたトニーは、小さく震える女の背中に口付けした。
(愛してる…ペッパー…)
決して口にしてはならぬ言葉を飲み込んだトニーは、彼女への想いを薄い膜の中に吐き出し果てた。
→②へ…