件のソーシャルワーカーとも相談し、ジニーは本当の母親であるケリーと暮らすことになった。
そしてケリーは…。ケリーが作った子供服やおもちゃをペッパーの知り合いのデザイナーに見せたところ、彼女の才能を見抜いたデザイナーは、是非うちで働いて欲しいと申し出たのだ。
生活が安定するまで、支援団体から援助を受けられることになったケリーは、今後も援助をしたいというトニーの申し出を丁重に断った。
「私、スタークさんたちに出会えたことで、一人ぼっちじゃないって分かったんです。それに、私の夢を後押ししてくださいました。それだけで十分です」
そう告げたケリーは、支援団体に寄付をしてほしいと頭を下げたのだ。
結局、彼女の意向を尊重することになり、トニーとペッパーはジニーとの別れの日を迎えた。
「ジニー…あなたはこれから、本当のママと暮らしていくの…。あなたの本当のママはね、あなたのことを世界一愛してるの。あなたはきっと幸せになれる…」
泣きながらジニーを抱きしめたペッパーを腕の中に閉じ込めたトニーは、きょとんとしているジニーの頬にキスをした。
「ジニー…ありがとう…。君のパパになれて、本当に楽しかった。でも、お別れだ…」
トニーとペッパーと別れなければならない…ようやく理解したジニーはキュッと目を閉じると、いやいやと首を降った。そして口をへの字に曲げた彼女は大粒の涙を流すと、トニーとペッパーの服を握りしめた。
「ジニー…」
まるで離れたくないと言うように、声を上げて泣き始めたジニーに、トニーの目からも涙が零れ落ちた。
「スタークさん…そろそろ…」
ジニーを迎えに来たソーシャルワーカーに声を掛けられ、涙を拭ったペッパーは、泣き叫ぶジニーを彼女に渡した。
「まー!!だー!!!」
手を伸ばし泣くジニーの姿に、トニーもペッパーも胸が張り裂けそうになった。が、幾度とな話し合い下した最善の方法なのだと、駆け寄りたい気持ちを押し殺した。
「では、スタークさん、ありがとうございました」
会釈したソーシャルワーカーはジニーを抱きなおすとエレベーターに向かって歩き始めた。
あのエレベーターに乗りドアが閉まれば、もうジニーと会うことはないだろう…。
泣き叫ぶジニーと何とか笑顔で別れを告げたい…。そう思ったトニーとペッパーは、その背中に向かって叫んだ。
「ジニー!君はこれからも幸せになれる。沢山の人が君のことを愛しているんだから…。それに、遠く離れていても、君のこと、パパとママは見守ってるからな…」
「ジニー。ママもパパも、あなたに会えて本当に幸せだったわ。ありがとう、ジニー…」
と、ジニーが泣き止んだ。そしてしゃくりあげながら顔を上げた彼女は、涙を浮かべた瞳でトニーとペッパーを見つめた。涙を流しながら何とか笑みを浮かべ手を振るトニーとペッパーを交互に見たジニーは、目元を擦るとにっこり笑った。そして二人に手を振りバイバイをしてみせたのだ。
「だー、まー。ばー」
この数か月、二人の心の拠り所になっていた可愛らしい笑顔を浮かべたジニーは、小さな手を一生懸命振りながら去って行った。
***
「急に寂しくなっちゃったわね…」
二人きりになった寝室で、ペッパーはトニーの肩にもたれかかっていた。
「そうだな…」
ペッパーの肩を抱き寄せたトニーは、頭にキスをすると囁いた。
「きっとジニーは幸せになれる。それにケリーも…」
「そうね…」
顔を上げたペッパーはトニーの瞳をじっと見つめた。ニヤッと笑ったトニーはペッパーのお腹に手を当てると軽く撫でた。
「それに、すぐに賑やかになるさ」
「えぇ。あなたの遺伝子を受け継いでるから、きっとジニー以上に毎日が大騒ぎね」
真面目くさった顔で頷いたペッパーに、トニーは頬を膨らませた。が、ぷっと噴き出したペッパーにつられて笑い出すと、トニーは彼女を腕の中に閉じ込めたままベッドに仰向けになった。そして目を瞬かせたペッパーの唇を奪ったトニーは、みんな幸せになりますように…と願いながらキスを続けた。
【END】