You’re our angel.②

その日から二人の生活は一変した。
今まで二人きりの生活だったのが、ジニー中心の生活へと様変わりしたのだ。
ペッパーが仕事に出掛けると、ラボで作業する時もトニーはジニーを連れて行った。トニーが作った音が鳴るホログラムがお気に入りになったジニーは、可愛らしい笑い声を上げて遊ぶのにすっかり夢中になっていた。昼寝をさせ、ミルクを飲ませ、再び昼寝をさせると、夕方になりペッパーが帰ってくる。お風呂に入れ、音の出るおもちゃでひとしきり遊んだ後、ジニーはぐっすりと朝まで眠ってくれた。
トニーがアイアンマンの仕事で出掛ける時は、ペッパーがジニーを抱き、見送るようになった。アーマーを着たトニーを初めは物珍しそうに触っていたジニーだが、彼女はアイアンマンがすぐに大好きになったようで、アーマーを見ると「キャー!」と大興奮するようになった。
時にはお互い仕事のためジニーを連れて行くこともあった。
ジニーのことはマスコミも協力し、身元を捜索していたので、トニーとペッパーが彼女を連れていても妙な詮索をされることなく、逆に何かと協力してくれた。

ある日、フューリーに呼ばれたトニーは、ジニーを連れてヘリキャリアへと向かった。珍しくヘリコプターで登場したトニーに、何事かとざわめいた周囲だったが、片手で小さな女の子を抱き、もう片方の手にはうさぎのぬいぐるみの見え隠れしている大きなマザーズバックを持ったトニーに、『父親業をしているトニー・スタークだ』と、特に女性陣は色めきたった。

「よぉ、スタークパパ。子連れ出勤か?」
からかうように声を掛けたクリントを無視したトニーは、ソファーの上にマットを広げると、ジニーを寝かせた。そして彼女お気に入りのおもちゃを取り出すと、ジニーに手渡した。
「あーうー」
音の出るおもちゃを振り回し、何やら訴えようと言葉を発するジニーの元へ、ブルースとナターシャがやって来た。
「この子が噂のジニーちゃん?」
「可愛いわね」
次々と集まってくる見知らぬ大人達に、ジニーは不安げな顔をして傍に座っていたトニーに手を伸ばした。
「ジニー、大丈夫だ。こいつらは仲間だ…一応」
安心させるようにジニーを抱き上げたトニーに、遅れてやって来たスティーブが声を掛けた。
「ところで、本当の両親は見つかったのか?」
「いや、まだだ」
首を振ったトニーに一同はため息を付いた。
「しかし、こんなにカワイイ盛りなんだぞ?余程の事情があったんだろうなぁ…」
「スタークに育ててもらえば幸せになれると思ったんだろうなぁ…」

次々と集まってくる大人達に愛嬌を振りまくジニーを眺めながら、トニーは彼女が来てからの日々を思い返した。
正直最初は戸惑った。子供の育て方はおろか、接し方すら知らなかったから…。それに自信もなかった。『父親』という仕事をきちんとできるのかという自信が…。
自分は父親から何一つ父親らしいことをしてもらっていない。だからどうすればいいのか分からなかった。
だが、ジニーと接して分かったことがある。ただ心から愛し慈しめばいいのだと…。それに間違っていてもいいのだと…。親も子供と一緒に成長すればいいのだと…。
純粋に自分を愛し信じてくれる小さな存在は、今やトニーの中で大きな存在へとなっていた。

「スタークよ、これをジニーちゃんにあげてくれ」
物思いに耽っていたトニーは、フューリーの声で我に返った。
目の前にフューリーが立っていたのだが、いつもの顰め面はどこへやら、デレデレと笑みを浮かべたニック・フューリーは、大きな袋から次々とアベンジャーズのぬいぐるみを取り出した。
「さぁ、ジニーちゃん。好きなだけ持って帰ってくれていいよ~。そうそう、ジニーちゃんのためだけに作らせた特注のフューリー人形もあるからね~」
どこから声を出しているのかと思うような甲高い声を出したフューリーに、周囲はドン引きしているが、本人は幸せなことに気付いていないようだ。
思わず後ずさりしたトニーだが、そんなトニーとフューリーを見比べたジニーは、キョロキョロとぬいぐるみを見渡した。そしてお目当てのぬいぐるみを見つけた彼女は、身を乗り出してそれを掴もうとした。
「あーあー!」
彼女の手の先にあったのはアイアンマンのぬいぐるみ。
「おい、さすがスタークの子供だな…」
目をくるりと回したクリントはジニーにアイアンマンのぬいぐるみを渡すと、トニーに向かってニヤッと笑った。

③へ…

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