How much do you love me?

いい夫婦の日

***

何の気なしに付けたテレビから流れてきた言葉に、ペッパーは思わず振り返った。
『夫への質問で愛情を確認してみませんか?』
番組では結婚10年目の妻が夫の愛情を確認するために、いくつかの質問をしていた。夫がどれだけ答えることができるかで愛情の深さを図り知るという企画らしいが、初めてプールに行った時の水着の色まで覚えていてくれたと夫に抱き付く妻の映像を見たペッパーは、ふと自分の夫のことを考えた。

果たしてトニーは私のことをどれくらい覚えていてくれているのかしら…と。自分の社会保険番号ですら覚えていないような男なのだから、もしかしたら初めてのデートで行った場所なんか覚えていないかもしれない。それを覚えていないからと言って、トニーの愛情を疑う訳ではない。現に、彼は公衆の面前でも平気で愛してると叫びキスしてくるのだから…。それに毎晩毎晩彼には愛されているのだし…。ただ単に確かめてみたかった。彼がどれだけ二人の思い出を覚えているのかということを…。

「そうとなったら、早速質問を考えなきゃ!」
鼻息荒く腕まくりしたペッパーは、書類の山を横にやると、ペンを走らせた。

その夜、夕食を食べリビングでくつろいでいるトニーにペッパーはクイズをしようと持ち掛けた。案の定、トニーは面倒くさそうに顔を顰めたが…。
「全問正解したら…ご褒美をあげるわ」
とペッパーが耳元で甘い声で囁くと、でれっと顔を崩したトニーは二つ返事で了承した。

「じゃあ、1問目ね。私の誕生日は?」
1問目なのだから簡単な質問を…と気を利かせたつもりだったが、お気に召さなかったのだろう。トニーは目をくるりと回すと首を振った。
「9月27日だ。おい、ペッパー。愛する君の誕生日を私が忘れると思うのか?ちなみにプロポーズしたのもその日だ」
その誕生日を覚えてくれたのは恋人になってからなのだが、2問目に用意していた質問の答えを言われてしまったので、ペッパーは慌てて3問目に目を走らせた。
「つ、次ね。私たちが初めて出会った日は?」
質問がまたしても簡単すぎたのか、トニーは退屈そうに頭を掻いた。
「それは君を秘書にとスカウトしに行った日のことか?6月12日だ。結婚記念日だぞ?忘れるはずがない。ちなみにあの時の君は可愛かったな。今も十分可愛いが。私が君を部屋から連れ出した時も真っ赤な顔をしてただろ?そうだ。その後ランチを食べに行っただろ?君は確かペペロンチーノを頼んだだろ?あのレストラン、また行ってみるか?」
そのペペロンチーノネタは4問目に用意していたものなのだが、思いの他抜群な記憶力と先を見据えた答えに、ペッパーは記憶を探る編は飛ばして、とっておきの質問に移ることにした。
「でもあのレストラン、この前通った時、別のお店になってたわ。残念だけど…。ということで、次ね。私の魅力を3つ答えて」
この質問は最後にする予定だった。3つ出てこなければ、今後の関係を見直さねばならばいかもしれない究極の質問…。
やけに鋭い視線を送って来る妻に首を傾げたトニーだが、ペッパーの魅力は3つどころか300万個でも挙げれそうなのだ。それを3つに絞るのは至難の業だ。だが、これに答えればご褒美が貰えるのだと、トニーはうんうんと頭を捻った。
「3つか…。難しいな…」
『難しい』と言われたペッパーは焦った。自分には3つ挙げる程、魅力がないのかと、沈み込んでしまったペッパーは唇を噛みしめると零れ落ちそうになった涙を堪えるようにうつむいてしまった。
どうしてだか分からないが急にふさぎ込んでしまった妻にチラリと視線を送ったトニーは、彼女を元気づけるように明るい口調で答えた。
「星の数ほどある君の魅力を3つに絞れというのは無理があるが…。優しく、芯が強く、何があっても私のことを信じてくれるその心…だな」
「え…」
顔を上げたペッパーはトニーを見つめた。ペッパーの大好きな煌めく瞳で見つめ返してきたトニーは、腕を伸ばしペッパーを抱きしめると、頭にそっとキスを落とした。
「ペッパー、君に関することなら、私は何だって覚えている。最も、恋人になる前の記憶は怪しいところはあるが…。つまりだな、君は私の全てなんだ。君の全てを愛している。だから君との思い出は鮮明に覚えている」
自分とのことは鮮明に覚えていると言われ、嬉しくなったペッパーはトニーの胸元に顔を押し付けるとふふっと笑みを浮かべた。そして彼の温もりを確認するかのように、背中にそっと腕を回した。
それを合図とするかのように、ペッパーを抱き上げたトニーは勢いよく立ち上がった。
「クイズは終わりか?全問正解したから、ご褒美をもらうぞ?」
「え?3問しかしてないじゃないの!まだ47問残ってるのよ?!」
一体どれだけ考えていたんだと、呆れたように目を回したトニーだが、そんな悠長に47問も答える程彼は忍耐強くなかった。
「残りの47問は、ベッドの中で答えてやる」
眉を吊り上げニヤリと笑ったトニーは、まだ文句を言おうとしているペッパーの口を唇で塞ぐと、寝室へと向かった。

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