ある日、帰宅したトニーは目の前に広がる光景に面食らった。3日前に届いたばかりの新車が、何故か玄関のガラス戸を破り室内に突っ込んでいるのだ。
「…何があったんだ…」
玄関のドアどころか、愛車のフロント部分は大破している。呆然と佇んでいるトニーに、長男のエリオットが恐る恐る近づき声を掛けた。
「パパ…ごめんなさい…。僕がやったんだ…」
口をポカンと開けたまま振り返ったトニーは、頭を下げる息子を穴が開くほど見つめた。
エリオットが週末、意中の相手と初デートすることになった。可愛い息子の初デートだと喜び勇んだトニーは、まだ免許取り立てで車を持っていない息子に『せっかくのデートだ。パパの車を使え!どれでも好きなのに乗っていいぞ!』と告げたのだ。
ということで、エリオットは予行演習だと弟のルーカスをお供に出掛けようとしたのだが、彼は玄関前で車を切り替えようとして、最もやってはいけないミスを犯してしまった。つまり、アクセルとブレーキを踏み間違え、玄関に突っ込んでしまったのだ。
確かに、どれでも好きなのに乗って行けと言ったのは自分だ。だが、まさか一番お気に入りの最新の車…しかも、まだ1度も乗っていない車に乗って行くとは思いもしなかった。
頭を抱えたトニーだが、免許取り立てでまだ自分の車も持っていない息子をけしかけたのは自分だ。この惨劇を見たらペッパーは卒倒しそうだが、幸か不幸か彼女は次女を連れてボストンにいる長女の元へ行っており、帰宅するのは3日後だ。
惨劇の元凶である長男と次男は揃って青い顔をしているが、この2人さえ口止めしておけば、ペッパーに見つかることなく処理できると考えたトニーは、息子2人の肩を抱き寄せると声を潜めた。
「エリ、ルーカス。こうなったらパパもお前達も同罪だ。ママには黙っていれば分からないさ。さっさと証拠隠滅してしまおう」
申し訳なさそうに顔を上げた息子2人に悪戯めいた笑みを浮かべウインクしたトニーは、背中を強めに叩くと、まずは業者を呼ぶようJ.A.R.V.I.Sに命じた。