Once upon a time…⑥

それから半年が経ちました。
結局トニーはヴァージニアと1度も顔を合わすことはできませんでした。
一層のこと、忘れた方がいいのかもしれないと思いましたが、運命の相手を簡単に忘れることができるはずがありません。
どうにかしてヴァージニアと会えないかと、トニーは城内をウロウロしますが、ヴァージニアのガードは固く、流石のトニーも突破できませんでした。

そんなある日、クリントに弓矢の稽古をつけてもらったトニーは、汗を流そうと井戸へと向かいました。
羽織っていた物を脱ぎ、上半身裸になったトニーは、冷たい水を頭から被りました。火照っていた身体が一気に冷め、トニーは水を切ろうと頭を乱暴に振りました。と、その時でした。
「アンソニー様、お召し代えをこちらに置いておきます」
突然可愛らしい声が聞こえ、トニーはぎょっとしました。誰もいないはずなのに、女性の声がするのです。
慌てて声のする方を振り返ると、一人の美しい女性が恥ずかしそうに立っていました。まだ幼さの抜けきっていない赤毛の美しい女性…つまりは恋い焦がれていたヴァージニア姫が。
半年会わなかっただけなのに、姫は背も伸び、体つきもすっかり女性らしくなっていました。
「ヴァージニア姫…」
ポカンと口を開けたまま見惚れているトニーに、顔を真っ赤にしたヴァージニアは恐る恐る近づきました。
「…お久しぶりです…」
トニーの熱っぽい視線を感じたヴァージニアですが、彼女の方も初めて見るトニーの逞しい裸体に胸の高まりを抑えることができません。
顔を伏せもじもじしている姫の姿に、トニーは我慢の限界でした。
姫の手を引っ張ったトニーは、彼女を腕の中に閉じ込めました。胸板に顔を押し付けられたヴァージニアの耳に、トニーの鼓動が聞こえてきます。ドキドキと脈打つそのスピードはとても速いのですが、心地よいリズムにヴァージニアの胸に初めての感情が宿りました。その感情が何なのか、姫はまだ理解できませんでしたが、身体は本能的にトニーを求めており、お腹の奥がきゅっと疼き始めました。
耳たぶまで真っ赤にしているヴァージニアの頬を撫でたトニーは、今すぐにでも襲い掛かりたい気持ちをぐっと堪えると、まずはキスまで持っていこうと両手で姫の顔をそっと包み込みました。
「そばかすが可愛い。姫のこと、ペッパーと呼んでいいか?俺のことはトニーと呼んでくれ」
思い返せば、会話らしい会話をするのは今日が初めてです。お互いの呼び名すら決めていなかったのです。
最愛の男性から与えられた呼び名を一瞬で気に入った姫は、ニッコリと笑いました。
「はい…トニー様…」
うっとりと目を閉じたヴァージニア…いえ、ペッパーの唇をトニーは奪いました。身体がドロドロに溶けてしまいそうなくらい激しいキスに、立っていられなくなったペッパーはトニーに身体を預けるようにもたれかかりました。力の抜けたペッパーを抱き上げたトニーは、キスをしながら自室へと向かいました。

「うふふ…うまくいきそうね」
2人の様子をこっそり陰から伺っていたのはマリア王妃でした。
ハワード王は、ヴァージニアが12になるまで待つように告げていたのですが、早く孫の顔が見たいマリアは既成事実を作ってしまえばと、水浴びをしている息子の元へヴァージニアを送り込んだのです。
「来年の今頃には、可愛い孫が抱けるかもしれないわ!そうとなったら、早速色々準備するわよ!」
傍にいた侍女に命じたマリアは、スキップしながら部屋へと戻って行きました。

⑦へ…

最初にいいねと言ってみませんか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。