半年ほど秘密の情事…と言っても、マリア王妃にはバレていますが…が続いたある日。
マリア王妃の思惑通り、ヴァージニアは妊娠しました。
「トニーったら、我慢できなかったのね」
ムフフと笑ったマリアですが、ハワードは渋い顔をしています。いえ、孫が出来たのですからハワードも内心嬉しくてたまらないのですが、『ヴァージニアが12才になるまでトニーと会わせるな』と命じていたのは自分ですから、わざと仏頂面を保っていました。
そんなハワードの心中に気付いているのかいないのか、不機嫌を装っている夫をマリアは睨み付けました。
「あら、あなた。あなただって同じだったじゃありませんか。婚約期間なのに私に手を出してトニーが出来て、結婚式を前倒しにしたじゃありませんか!」
「ま、マリア!!」
このままだとマリアは何を言い出すか分かりません。それにトニーとヴァージニアの結婚式は半年後に行われる予定だったのですから、マリアの言う通り前倒しすればいいのです。
ということで、トニーとヴァージニアの結婚式は一週間後に盛大に行われることになりました。
結婚式には周辺諸国の王族を招待するのですが、隣国のポッツ国…つまりはヴァージニアの実家に声を掛けるかが問題でした。ポッツ国の王であるヴァージニアの父親は彼女が9歳の時に亡くなっているので、呼ぶとなると義母であるマヤ王妃しかいません。マヤ王妃はヴァージニアを殺そうとしたのですから、ハワードもマリアも彼女を呼ぶのは反対しました。
「私…お義母様にはお会いしたくありません」
当の本人のヴァージニアはもちろん反対しましたが、何故かトニーだけは賛成したのです。
「俺に考えがある。それに、ペッパー。君のことは全力で守る。だから君が幸せになっている姿を見せつけてやれ」
こう言うのですから、ハワードもマリアも、そしてヴァージニアも賛成せざるを得ません。
結局マヤにも招待状を送ることになりました。
隣国のスターク国から届いた結婚式の招待状にマヤ王妃は喰いつきました。
スターク国は、広大な領地と巨額の富を持つ世界一の国です。その国の王子の花嫁…つまりは未来の王妃の座を掴んだオンナの姿を拝んでやろうと、マヤ王妃は早速支度を始めました。が、やはり気になるのは、その花嫁が自分より美しいか美しくないかということ。魔法の鏡に向かったマヤは、久しぶりに鏡に尋ねました。
「鏡よ鏡…この世で一番美しいのは誰?」
『我が主でいらっしゃいます、スターク国のハワード王ご子息、アンソニー王子の花嫁でございます』
そうなのです。実はジャーヴィスは元々スターク国のものでした。それが8年前、この鏡の存在を知ったマヤは、パーティーで出会ったトニーと一夜を共にすると鏡を盗み出したのです。ちなみに、トニーは酔っぱらいすぎていたため、マヤとのことはこれっぽっちも覚えていません。
鏡が映し出したのは、ベッドの上でトニーに抱かれている1人の女性の姿でした。
「あぁ!トニー様が!」
一度きり…しかも鏡を盗み出すために一夜を共にしたと言え、トニーとのことは忘れられるはずがありません。そのトニーが他の女性と戯れており、しかもその相手が世界一の美女だというのですから、悔しくてたまりません。こうなったら花嫁の正体を突き止め、あわよくば息の根を止めてやろう…。そう考えたマヤ王妃は、身支度を整えるとスターク国へと飛んで向かいました。
その頃、スターク国では…。
トニーとヴァージニアの結婚式を明日に控え、国中お祭り騒ぎでした。もちろん城内でも前夜祭が開催されておりましたが、朝が早いからとトニーはヴァージニアを連れて早々に部屋に戻っていました。しばらくは明日の結婚式の話をしていた2人ですが、すぐにいい雰囲気となってしまい、トニーはヴァージニアをベッドに押し倒しました。
「と、トニー様!明日、早い…ん…」
「黙れ、ペッパー」
ジタバタ抵抗するヴァージニアの唇を奪うと、姫は大人しくなり、トニーの身体にそっと腕を回しました。
「明日はようやくペッパーを俺の妻にできる」
腕の中に閉じ込められたヴァージニアは、ポッと頬を染めましたが、彼女も明日が待ち遠しくてたまらなかったため、トニーを見上げるとニッコリ笑いました。
「はい、トニー様。よろしくお願い致します」
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