ヴァージニア姫を馬に乗せたトニーは、ふと気になりました。姫の周りにいた奴らはこの後どうするのかと。それに、アベンジャーズの噂は聞いたことがあります。仲間になればこれ程心強いものはありません。そこで、トニーはアベンジャーズに提案しました。『ヴァージニア姫と共に我が国へ来ないか』と。この提案にはキャプテンを筆頭に皆、大喜び。このまま森にいても幸先不安なばかりなのですから、スターク国で就職すれば生来安泰です。それにヴァージニア姫もお守りすることができるのです。
ということで、トニーはヴァージニア姫と共にアベンジャーズを連れて城へと戻りました。
お供を2人連れただけで、ふらっと出て行った息子が大人数で帰ってきたのですから、トニーの父親と母親であるハワード王とマリア王妃は面食らいました。
「あらあら、そちらの可愛らしい方は?」
トニーが大切そうに抱き上げ連れてきた少女は、ハワードとマリアに深々とお辞儀をしました。
「ポッツ国のヴァージニア姫だ。こうこうこういう事情で、連れて帰ってきた。俺、彼女と結婚するから」
息子の突然の結婚宣言に、ハワードとマリアはポカンと口を開けたままです。25歳になってもまだふらふらと女遊びを止めない息子が、15も年下の少女を連れて帰ってきて、結婚すると言い出したのです。驚かないはずがありません。ようやく息子が身を落ち着かせる決意をしたと喜ぶ一方、ヴァージニアは10歳の少女なのです。さすがにすぐには結婚させる訳にはいかないと、マリアはトニーの目に触れぬようヴァージニアを匿ってしまいました。
一方のアベンジャーズは…。
トニーが父王に事情を説明すると、ハワードは快諾ました。そしてアベンジャーズをトニー直属の部下に任命したのです。
ところでこのトニー王子、父親のハワード王に似て頭が良く、幼い頃から父親を真似て様々な物を発明してきました。その才能はハワードも一目置く程で、今ではスターク国の使用する最新鋭の武器は、トニーが開発している程でした。
「お前たちの武器を作ったぞ」
アベンジャーズの面々がトニーに呼び出されたのは、彼らがスターク国へやって来て1週間ほど経った頃でした。
キャプテンには何でも弾き飛ばせる金属製の軽くて丈夫な盾、闘いで左腕を失ったウィンターソルジャーには頑丈な義腕、ファルコンには遠くまでよく見え装着できる双眼鏡、弓矢の名手ホークアイには様々な矢、ブラックウィドウには伸縮自在な絶対に折れない棒、怒ると緑色の怪物に変身するハルクには、巨大化しても破れないパンツを渡したトニーは、感嘆する面々に向かい得意げに鼻をこすりました。
「必要な物は何でも言ってくれ」
と、トニーの肩を誰かがつつきました。ソーです。
「おい、俺は何も貰ってはおらぬ」
『自称』神様のソーは、本当に神様なのか、不思議な力を持っています。ハンマーを振り回し飛ぶこともできますし、雷も操れます。ですからトニーとしても彼のために何を発明すればいいのか分からなかったのです。ですが、分からないとは言いたくありません。そこでトニーはある秘策を用意していました。
「ソーよ、お前は神様だ。だからいくら俺でも神に与えるような物は何もない。だが、一つだけある。俺がお前に与えられる物が…」
そう言いながらトニーはポケットから何か取り出しました。
「お前が気に入ったと言っていた居酒屋のタダ券だ。有効期限はお前が我が国にいる間…つまり生涯タダだ」
自分には何もないと拗ねていたソーは大喜び。喜びのあまりトニーを抱きしめたソーですが、ぎゅうぎゅう抱きしめられているのですからトニーは苦しくてたまりません。
「おい!ソー!離せ!」
ジタバタと暴れるトニーをようやく離したソーですが、トニーは大袈裟にゴホゴホと咳き込んでいます。
「ところでトニー様、ヴァージニア様はお元気ですか?」
話題を変えようとブルース・バナーはヴァージニアのことを口に出しましたが、トニーは不機嫌そうに顔を顰めました。
「元気だと思う。最も母上が匿ってしまい、俺も食事の時しか会っていない。それも最初の2日だけだ。それからは姫の姿は見ておらぬ。母上の侍女の話では、姫は母上と本当の親子のように仲良く過ごしているということだ。全く…俺の花嫁なのに、俺は話も出来ないんだぞ?俺に会わせると俺がすぐに手を出すと母上は言うんだぞ?」
ブツブツと文句を言うトニーですが、顔を見合わせた一同はその通りだと頷きました。
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