トニーは一部の授業を除いて、ほぼ全ての授業をペッパーと同じものを取ったらしく、結局午前中はずっと2人仲良く机を並べていた。
が、天才トニー・スタークにとって、アカデミーの授業ほど退屈なものはないらしい。
真面目にノートを取るペッパーの横で、トニーはタブレットで他のことをしているではないか。
「何してるの?」
流石に気になりこっそり尋ねると、トニーはタブレットをペッパーに渡した。
「フューリーに頼まれたんだ。訓練用のロボットを作れって」
そういえば、彼はアカデミーのシステム開発に関わっていると聞いたことがある。
「でも、今は授業中よ?ちゃんと聞いた方が…」
眉を潜めるペッパーに向かい、トニーは大あくび。
「分かってることを今更聞いてどうするんだよ。君のそばにいたいから授業に出てるだけなのに」
素早くペッパーの頬にキスをしたトニーはタブレットを取り上げると再び作業に熱中し始めた。
確かに彼は他の生徒が誰一人答えられない質問でも必ず答えるし、テストも常に満点だ。
これが本当の天才なのね…と気付かれないようにため息を付いたペッパーは、授業に専念することにした。
***
午後からは授業もなく、2人はデートすることになったのだが、トニーが『ロボットとか俺が作ったものを見せたいから、うちへ来いよ』と告げたことから、2人はトニーの住まいであるスターク・タワーへと向かった。
初めて訪れるタワーに、ペッパーは凄い凄いと頻りに感心しているが、トニーは首を傾げた。実はパーティー好きのトニーはアカデミーに入学以来、月に2、3度タワーでパーティーを開いていたのだ。アカデミーの全生徒が一度は来たことがあると思っていたのに、まさか彼女は一度も参加したことがないのだろうか…。
「え?パーティーに来たことないの?」
まさかと思いつつ尋ねてみると、ペッパーはキョトンとしているではないか。
「うん。だって…何だか遠い世界のお話だったし…」
一度も来たことがないということは、彼女はロボットも発明品も目にしたことがないということだ。そうなると、彼女の反応を楽しみながら説明できるということだと思い直したトニーは、ペッパーの手を握るとラボへ向かった。
「トニーってすごいのね!」
一通り案内し終わると、ペッパーは興奮気味に感想を述べ始めた。頬を赤く染め目を輝かせているペッパーは可愛らしく、トニーは今すぐにでも抱きしめたい衝動に駆られた。
「大したことないさ。それより、ケーキ買ってるんだ。食べるか?」
「ありがと、トニー」
首を伸ばしトニーの唇にキスをしたペッパーだが、初めて彼女から唇にキスをされたトニーは飛び上がった。
(あー!もう限界!)
彼女は恋愛には疎そうだし、このままノンビリ関係を進めていくべきなのかもしれないが、一刻も早く自分のモノにしたいという衝動を抑えきれなくなったトニーは、ペッパーの身体を腕の中に閉じ込めた。
「と、トニー…」
胸元に顔を押し付けられたペッパーの耳に、彼の鼓動が聞こえてきた。
「あ、あのさ…俺……その……」
いつもなら口説き文句も山ほど浮かぶのに、どうしたものかペッパーが相手だと何一つ思い浮かばない。トニーの鼓動は今や激しさを増しており、そっと視線を上げたペッパーは彼の顔が真っ赤に染まっているのに気づいた。
プレイボーイで手が早いと有名な彼だが、やはり彼にとって自分は大切な存在なのだと感じたペッパーは、嬉しくなりふふっと笑みを浮かべた。
「ペッパー…」
聞いたことのないような甘ったるい声に顔を上げると、唇に甘いキスが舞い降りた。口づけは次第に深くなり、経験したことのない深いキスにペッパーは頭がクラクラしてきた。
吐息と共に唇を離すと、トニーがぎらついた瞳で見つめてきた。経験のないペッパーだが、この先に何が待ち受けているかくらいは分かっている。耳の先まで真っ赤に染めたペッパーは、何度も深呼吸するとトニーのシャツをキュッと握りしめた。
「トニー…あ、あの…わ、私……」
恥ずかしくて言葉が出ない。唇を震わせたペッパーをトニーは優しい瞳で見つめた。
「初めてなの?」
恥ずかしそうに頷いたペッパーは、真っ赤になった顔を隠すように両手で覆った。可愛らしいペッパーの仕草に、彼女の手をそっと取ったトニーは、手の甲に口づけした。
「じゃあ、俺を君の最初で最後の男にさせてくれないか?つまり、ずっと、俺だけのオンナでいてくれ」
昨日からプロポーズめいたことばかり言っているのは、自分でも分かっている。冷静な目で見れば滑稽な光景かもしれないが、トニーはペッパーに夢中だった。そして彼女を永遠に手放したくないという思いを抑えることはできなかった。
何度か瞬きしたペッパーだが、彼女もトニーに夢中なのだから、彼の言葉は嬉しくてたまらない。はにかむような笑みを浮かべたペッパーは小さく頷いた。
ペッパーを抱き上げると、トニーはキスをしながら寝室へと向かった。
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