On Your Side Forever⑰

それから3日経っても、何も進展はなかった。キリアンは逃走中、そしてトニーも意識不明のまま。
ヴァージニアはずっとトニーに付き添っていたが、今日はどうしても外せない会議がある。トニーの容態が気になりつつも、ヴァージニアは会社へと向かった。

出社すると、ヴァージニアを見た社員はコソコソと噂話をしていた。トニーが意識不明の重体であること、そしてヴァージニアがずっと付き添っていることは、周知の事実となっているのだから、さすがに2人の関係に皆気づき始めたのだろう。
皆の視線を感じながらヴァージニアは席についた。
「社長、スタークさんの容態は…」
議題に入る前、一人の社員が心配そうに口を開いた。
「まだ意識が戻らないの…」
ヴァージニアの言葉に、皆肩を落とした。その様子から、社員が本当に心からトニーのことを心配してくれているのだと感じたヴァージニアは、いい加減自分の口からトニーとのことを話すべきだと考えた。
「この機会に、皆さんにお伝えしておきたいことがあります」
ヴァージニアの真剣な声にざわついていた会議室はシーンとなった。もう1度室内を見渡したヴァージニアは、トニーから贈られた指輪に触れると話し始めた。
「皆さん、もうお気づきかもしれませんが…私はトニーと半年前からお付き合いさせて頂いてます。彼は私の父の代からの秘書です。ですから彼のことを昔から兄のように慕っていました。彼は私にとって、兄であり友であり…そして何よりも大切な最愛の方です。今、彼は必死に戦ってます。私たちの元に戻ってこようと、必死に戦ってます。私には祈ることしかできません。ですけど、手を握りそばにいることで、彼に勇気を与えられるなら…私は彼のそばにいてあげたい…。ですから…皆さん…。私……」
声を詰まらせたヴァージニアだが、社員は全員、ヴァージニアの気持ちを分かっていた。2人がどれだけお互いに愛し合っているかも…。
「社長、今はスタークさんのそばにいてあげて下さい」
顔を上げたヴァージニアに、社員は笑顔で頷いた。
「ありがとう…皆さん…」
思わず零れ落ちた涙…それはヴァージニアが社員の前で初めて見せた涙だった。

会議が終わるや否や、ヴァージニアは病院へと戻った。
トニーの病室へ入ろうとしたヴァージニアだが、中から話し声が聞こえ足を止めた。
(誰かいる…)
自分とハッピー、そしてトニーが指定していた一部の人間を除き面会謝絶なのだ。
一体誰がいるのだろうかと、ゴクリと唾を飲み込んだヴァージニアはそっとドアを開けた。

「…いい加減目を覚ませよ。彼女、泣いてるぞ?」
ベッドサイドに座りトニーに話しかけていたのは、ヴァージニアも良く知っている人物だった。
「ローディさん!」
名前を呼ばれ振り返ったのは、トニーの親友であるローディことジェームズ・ローズだった。
「ポッツさん、久しぶりですね」
ローディは空軍のパイロット。最後に会ったのは彼が海外へ任務に出掛ける10か月前だった。
「いつ戻られたんです?」
ハグをしあった2人はソファーへ腰を下ろした。
「今朝帰ってきたんです。トニーのことをニュースで聞いて、居ても経ってもいられなくて。本当はすぐに戻って来たかったんですが…」
眠り続けるトニーを見つめたローディは、携帯を取り出すとヴァージニアに渡した。
「あいつ、この半年間毎日のように、あなたの惚気話をメールしてきてたんですよ。でも、あの事件があった日に届いたメールは、いつものメールとは違っていた…。まさかこんなことになるなんて…」
画面にはトニーがローディに宛てたメールが表示されていた。
日付けはあの事件があった日の18時半。
『あいつが会社に来た。あの日の動画を持っているらしい。彼女を寄こせと言われたが、俺が今から会いに行ってくる』
次のメールは19時半過ぎのものだった。
『あい つの狙い 俺。 あいつ ジニー と結 婚して 会社 乗っ取る気。俺が 邪魔。ヤバい 刺された。血が 止まらない。ローディ あと 頼む』
時間は19時半過ぎ。つまり、トニーは負傷しながらも、事件の真相を親友にメールで送り、家まで車を運転して戻って来たのだ。
メールが途切れ途切れなのは、彼が意識朦朧としていたからだろう。

「これ…トニーの携帯には残っていなかったわ…」
携帯を握りしめたヴァージニアは震える声でローディに告げた。
「あいつ、俺に送信した後、削除したんじゃないかな?あいつらに携帯を奪われたらまずいと思って…」
小さく息を吐いたローディは、トニーとヴァージニアを交互に見つめた。
「メールは警察に提出してきた。計画的犯行だという証拠は一つでも多い方が…」

と、その時だった。ドタドタという足音と共に、ハッピーが病室へ駆けこんで来た。何事かと立ち上がった2人に、肩で息をしながらもハッピーは叫ぶように告げた。
「ポッツ様!き、キリアンたちが…捕まったそうです!」

キリアンたちが逮捕された。
それは、待ち望んでいた知らせだった。
もう彼らを恐れる必要はないのだ。再びトニーが傷つけられると恐れなくてもいいのだ…。

「よかった…」
そう一言呟いたヴァージニアの目にはみるみるうちに涙が溢れ始め、しゃくり上げた彼女はやがて声を上げて泣き始めた。
ハッピーもローディも抱き合い、涙を流し喜んでいる。
泣きじゃくりながらもトニーに視線を送ったヴァージニアは心の中で彼に呼びかけた。
(トニー、安心して。あなたを傷つける人間はもういないわ…。だからお願い…早く目を覚まして…)

⑱へ…

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