晴れてスターク・インダストリーズのCEOに就任したペッパーだが…。
「もー!いや!!」
書類の山を目の前にしたペッパーは、金切り声を上げると、髪を掻きむしった。
今までもトニーに代わり社内のことは取り仕切っていたが、秘書とCEOではやはり立場が違う。
いくらトニーが遊び呆けていたと言っても、会社の行事では彼が挨拶などをしていたし、重要な会議にも嫌々ながら出席し存在感をアピールしていたのだから…。
それに加えて、多々でさえ多忙なところに先のエキスポでの一件の始末もあり、ペッパーは限界寸前だった。
このままストレスを溜めたまま仕事をしてもはかどらない。そう思ったペッパーは、家に帰ることにした。
自宅…と言っても、恋人になってからはトニーの家に入り浸っており、半同棲状態なのだから、ペッパーはマリブのスターク邸へやって来た。
リビングに向かうと、トニーはTVを見ていた。
「おかえり、ハニー。随分疲れた顔をしてるじゃないか」
ヒールを脱ぎ、ジャケットを放り投げたペッパーは、グッタリとトニーの横に座った。
「君の好きな中華を買ってきたぞ?食べるか?」
だが、疲れすぎて食欲が湧かないのか、ペッパーは無言で首を振った。様子のおかしいペッパーに、流石のトニーも不安そうだ。
「どうした?」
そっと髪の毛を梳くと、ペッパーは閉じていた目を開けチラリとトニーを見た。
「ストレスで死にそうよ…」
今までも『ストレスで死にそう!』とペッパーはよく喚いていた。それはトニーが時間を守らなかったり、会議をドタキャンしたりと理由は様々だったが、ブツブツ言いながらも彼女はちゃんとこなしてきた。だが今回は様子が違う。イライラを通り越して、すっかり気が滅入っているようなのだ。
トニーの肩に顔を押し付けたペッパーは、そのまま彼に抱きついた。その背中を撫でていたトニーは、彼女のために何をするのが一番いいだろうかと頭を捻らせたが、結局は彼女の希望を叶えるのが一番だろうと思い直した。
「それならストレス解消しよう。君がやりたいことをやるか?どこかに行くのもいいな…」
だがペッパーは小さく首を振った。
「いいえ…このままがいいわ…。あなたといるのが、一番よ」
そう言うとペッパーは目を閉じた。
しばらくすると規則正しい息遣いが聞こえてきた。どうやら眠ってしまったようだ。
「J、消してくれ」
起こさないようそっとペッパーを抱き上げたトニーは、リビングを後にした。