149. Ghost

トニーが死んだ。
そう聞かされたペッパーだが、にわかには信じられなかった。

どのくらい経ったのだろうか。
気がつけば、外は真っ暗になっていた。
と、ガタッと物音がした。
何事かと顔を上げたペッパーの目に飛び込んできたのは…。

「どうしたんだ?幽霊を見たような顔をして…」
暗闇の中から現れたのはトニーだった。
全身血と埃塗れの彼は、額にある大きな傷から血を流していた。
死んだと聞かされた彼が目の前にいる…。にわかに信じられないペッパーは、立ち上がったがその場に立ちすくんでしまった。
「だ、だって…あなたは…死んだって…」
じわっと目に涙が浮かんだ。涙は止まることなく溢れ始め、頬を伝わりポタポタと床に落ちていく。
「は?誰が死んだんだ?」
左脚を引きずりながらも、トニーはゆっくりとペッパーに向かって歩き始めた。
「あなた……」
トニーに合わせ、ペッパーも一歩一歩彼に近づいていく。
お互い半分程進んだ所で、2人はようやく向かい合った。
恐る恐る手を伸ばすと、トニーの腕に触れた。と、ペッパーの胸にようやく嬉しさと、そして安堵が押し寄せてき、ホッとした彼女は顔を歪めるとトニーに抱きついた。
「痛てて……」
顔を顰めたトニーだが、彼自身も一刻も早くペッパーを抱きしめたくてたまらなかったのだ。震えるペッパーの背中を撫でたトニーは、彼女の髪に口付けした。
「ハニー、大丈夫…大丈夫だ…」
何度も繰り返し囁かれるトニーの声に、しばらくするとペッパーも落ち着きを取り戻した。

「何があったの…」
涙を拭ったペッパーは、トニーの頬を両手で包み込んだ。その手をそっと握ったトニーはふぅと息を吐くと肩の力を抜いた。
「攻撃されて地上に落下した。しかも敵の支配地域にだ。アーマーも壊れるし、さすがの私ももうダメだと思った。だが、君の顔が浮かんだ。君に会いたい一心だった。と、目の前に納屋があった。中には使えそうな物が山のようにあった。アーマーを修理し、何とか飛べるようになったから、脱出したんだ」
再び大きく息を吐いたトニーは、唇を震わせているペッパーの髪の毛に指をすべらせると、じっと見つめた。
「ペッパー、約束しただろ?何があっても戻ってくると。君は私の全てなんだから…」
ニッコリ笑ったトニーはペッパーの唇を奪った。いつもと変わらぬ柔らかく温かな感触に、ペッパーはようやくトニーが今目の前にいると実感することができた。

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