トニーが入院して1ヶ月。
ベッドに起き上がり、食事も制限はあるものの取れるようになったトニーの元へ、ブルースが見舞いにやってきた。
「あら?いらっしゃい」
ベッドサイドに座り、右手の使えないトニーが昼食を食べるのを手伝っていたペッパーが、ブルースを出迎えてくれた。
「食事中だったか…すまない…」
何となく甘い空気が漂う室内。
トニーの方をちらりと見ると、ブルースの予想通り、邪魔するな…としかめ面をしていた。
「調子はどうだ?」
「まずまずだな…。ベッドに起き上がれるようになったし、食事もできるようになったしな…」
「右手は…」
「指先だけだが…感覚も戻ってきた。まだ動かないが…」
「お医者さまがね…時間はかかるけど…元に戻るでしょうって…」
ペッパーがトニーの右手をさすると、トニーは少しだけ微笑んだ。
「そうか…よかったな、スターク…」
メガネを外し目元を拭ったブルースを見たトニーは
「おい、君もか。君たちの涙はいらないぞ…。前も言っただろ…」
と大げさにため息をついた。
「もう、トニーったら…。そんなこと言わないの」
ペッパーに軽く睨まれたトニーは、ペッパーに見えないように小さく舌を出した。
「で、何の用だ?」
「今行っている実験が行き詰まってしまって…。君の意見を聞きに来た。何かいい突破口はないかと思ってね…」
「データーはあるか?見せてくれ」
嬉しそうにブルースと話し出したトニー。
身体が自由に動かないこと、そして何よりも動かなくなった右手のことで、トニーは一人になるとよく沈み込んでいた。ペッパーがそばにいると、落ち込んでいる素振りなど一切見せないのだが、先日そっと部屋を覗いたペッパーは、動かない右手をじっと見つめているトニーの目に光るものを見てしまったのだ。
久しぶりに楽しそうなトニーの姿を見たペッパーは、二人に声をかけた。
「ねぇ、ブルース。しばらくここにいるでしょ?トニーの着替えを取りに家へ戻ってくるから…」
「あぁ、話し相手になっておくよ」
「お願いね。トニー、夕方までには戻ってくるから。欲しい物があったら連絡して?」
「分かった。私は大丈夫だから、ペッパー、少し息抜きして来い…」
ドアを締める直前、聞こえてきた笑い声に、ペッパーの目からは嬉し涙が零れた。
よかった…。トニーにも笑いあえる仲間がいてくれて…。私以外にも心から心配してくれる仲間がたくさんいてくれて…よかった…。
→4へ…