126. Code

エストはかれこれ30分、ラボの入り口で頭を悩ませていた。
子供だけで父親のラボへ入ることは固く禁じられているのだが、こっそり忍び込んでみたという好奇心に勝てるはずはない。
いつか実行してやろうと目論んでいたエストだがその機会はなかなか訪れない。
が、チャンスはひょんなことから訪れた。
母親は仕事に出かけ、父親と留守番していたのだが、その父親は今しがたアベンジャーズの仕事で急遽召集。代わりに留守を仰せつかったハッピーは、遊び疲れリビングで爆睡中。
ハッピーが鼻を摘まんでも目を覚まさないことを確認したエストは、今日がチャンスとばかりに地下へと駆け下りていった。

が…。
『エスト様、コードが違います』
父親の名前、母親の名前、自分と弟の名前、アイアンマン、アベンジャーズメンバーの名前、父親の好きなバンド名…。考え付く単語を片っ端から打ち込んだが、返ってくるのは否定の言葉ばかり。
「うーん…わかんないや…」
考えに考え抜いたが、ここまで正解が出ないとなると、父親しか知らないような専門的な言葉なのかもしれない。
どうしたものかとエストが思案していると、階上から母親の声が聞こえてきた。
「あ!ママがかえってきた!」
ラボに侵入しようとしたことがバレたら大変だ。
エストは慌ててリビングへと駆け上がって行った。

その夜、ラボでアーマーの整備をするトニーの元に、子供たちを寝かせつけたペッパーがコーヒー片手にやって来た。
「トニー、コーヒー飲まない?」
「なんだ?こんな時間にカフェインたっぷりのコーヒーを差し入れに持ってきたということは…さては今夜は朝まで…」
ニヤニヤしながらコーヒーを受け取ったトニーだが、ペッパーは頬を赤く染めると隣に腰を下ろした。可愛らしい妻の反応に気を良くしたトニーは、カップをデスクに置くと、ペッパーの腰を引き寄せ唇を奪った。次第に深くなる口づけ。
「トニー…ここだと子供たちが…」
甘い吐息と共に漏らしたペッパーの言葉に、トニーはわざとらしく眉を吊り上げた。
「大丈夫だ。寝室よりよほど安全だ。ここのコード、子供たちは分かりっこないさ。今のところはな」
「PEPPERONYね」
ジャーヴィスがネット上で見つけたトニーとペッパーのCP名。確かにインターネットには手を出していない子供たちは、今のところ知る由もないかもしれない。
「そうさ、私と君の合わせ技だ。つまりここで今から…」
顔をさらに赤らめたペッパーは、これ以上トニーが言う前にと、慌てて彼の唇を奪った。

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