「だーっだ?」
上目遣いで見上げてくる息子の仕草は母親であるペッパーそっくり。
ため息をついたトニーは首を数回振ると、顰め面をした。
「エリ、その顔はやめろ。ママには通用するかもしれないが、その訴えはパパには通用しないぞ」
夕食前、クッキーが欲しいと訴え始めた息子。1枚だけならと食べさせたのだが…。
唇を尖らせた息子の目に涙が浮かび始めたのに気付いたトニーは、彼を抱き上げた。
「エリ、もうすぐ夕食だ。ママが美味いご飯を作ってるんだぞ?お前はママのご飯よりもクッキーの方がいいのか?」
何事か考えるように父親の肩に顔を押し付けたエリオットは、Tシャツをキュッと握りしめると小声で囁いた。
「まんま」
物分りが良いのは母親に似たのだろうか…。ふとそんな考えが頭を過ったトニーが、息子の小さな背中を軽く摩った時だった。
「トニー、ご飯出来たわよ」
キッチンから聞こえてきた愛しい妻の声。
「ほら、エリ。お前の大好きなママのご飯ができたぞ」
歓声を上げる息子を抱き直したトニーは、ゆっくりをソファから立ち上がった。