11月23日 いい兄さんの日

禁じられた関係」の義兄妹トニペパです。

***

ある日のこと。
「ヴァージニアさんのお兄様って、あのトニー・スタークさんなんでしょ?」
ペッパーがこの学園にやって来て3ヵ月。友達もでき、楽しく学園生活を送っているペッパーに話しかけてきたのは、学園でも美人と有名な生徒たち。
「えぇ、そうですけど…」
彼女たちとはあまり話したことのないペッパーは、彼女たちの口からいきなり兄の名前が飛び出したため、警戒するように頷いた。ペッパーの警戒心に気付いていないのか、マヤと名乗った生徒は頬を染めるとその場で軽く飛び跳ねた。
「実は、私達、トニー・スタークさんのファンなんです!だから是非1度でいいからお会いしたくって…。だから、失礼を承知でお願いします。お家にお伺いしてもよろしいですか?」
(そういうことね…)
子供っぽい自分と比べて数段大人びているマヤ達の姿に、ペッパーの心はざわついた。トニーの愛を疑う訳ではないが、彼女たちを見て彼が心を動かされないかペッパーは少々不安だった。
「お兄様、お仕事が忙しくて…」
やんわりと断ったつもりだが、彼女たちに通用するはずがない。
結局ゴリ押しされたペッパーは、彼女たちを家へと連れて帰った。

(お兄様、お戻りになられていませんように…)
祈るような気持ちで玄関を開けたペッパーだが、何ともタイミングの悪いことに、今日に限ってトニーはペッパーより先に帰宅していた。
ペッパーが友人を連れて帰ったことに、お友達が出来たのねとマリアは大喜びでもてなしてくれた。だがトニーは違った。珍しく早めに帰宅できたのだから、ペッパーを連れてどこかに出掛けようと思っていた目論見がご破産だ。
不機嫌そうに唸ったトニーだが、せっかく出来たペッパーの友人を邪険にする訳にもいかず、無理矢理笑顔を貼り付けた。
一見機嫌良くもてなすトニーにマヤたちは天にも上る心地だった。
「いつも妹が世話になっているようだな」
と棒読みで社交辞令を言うトニーの一言にも、彼女たちは黄色い声を上げて反応している。
「そんなことありません。ヴァージニアさん、お勉強もですけど何でも出来ますし、みんなの憧れなんです」
会話が弾んでいるようだが、ペッパーは気づいていた。トニーの眉間にどんどんとシワが寄っていることに…。
(お兄様、ご機嫌斜めだわ…。きっとこの後何かご予定があるのね…。早くみんなに帰って頂かないと…)
その予定はペッパーありきの予定なのだが、そんなことをペッパーは知る由もない。
「ヴァージニアさん、お兄様ってとてもステキな方ね!」
「いいお兄様でヴァージニアさんは幸せね!」
とペッパーを羨むマヤたちだが、さりげなくトニーににじり寄ったマヤは、どさくさに紛れて彼の手に触れているではないか。トニーも気付いているはずなのに、場の雰囲気を読んでか、特に拒絶しないのだから、ペッパーも次第に腹が立ってきた。
(お兄様も嫌だとおっしゃればいいのに!)
これ以上いると不愉快な態度をとってしまうかもしれない。そう考えたペッパーは断りを入れるとトイレへ向かった。

廊下の角を曲がろうとしたその時、誰かに腕を引っ張られ小部屋へと押し込められた。
(え?!誰?!)
部屋は薄暗く状況を把握できないペッパーはジタバタと暴れようとしたが、力強い腕の中に閉じ込められると大人しくなった。
大きく温かな胸元に顔を押し付けられたペッパーは、オーデコロンと煙草の混じる匂いを吸い込んだ。
「お兄様…」
ふふっと顔を摺り寄せてくるペッパーの頭を撫でたトニーは、流れるように美しい赤毛にそっと口づけした。
「ペッパー、計画が台無しだ。今日は早く帰宅できたから、お前を連れて出掛けようと思ってたんだぞ?どうせ彼女たちが無理矢理お前に付いて来た…ってところだろうけど。だけど今夜はお仕置きだ。覚えてろよ」
「お仕置きって…」
不安げにトニーの方を見つめたペッパーだが、暗闇ではお互いの顔をはっきりと認識できるはずもない。それでもオーシャンブルーの瞳と琥珀色に煌めく瞳が交錯すると、トニーはペッパーの唇を強引に奪った。唇の隙間からトニーの舌を迎え入れたペッパーは、おずおずと彼の舌に自分の舌を巻き付けた。口づけは一層深くなり、普段はベッドの中でしか貰わない蕩けるようなキスにペッパーは我慢が出来なくなっていた。だが、数部屋離れた場所には、母親どころか友人までもいるのだ。何とか理性を総動員したペッパーはトニーのシャツをキュッと握りしめると唇を離した。
「…早く戻らないと…」
「そうだな。この続きはまた今夜。もう少しだけ妹思いの『いいお兄様』を演じてくるか」
楽しそうにウインクをしたトニーは、素早くペッパーにキスをすると、皆の待つ応接室へと戻って行った。

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