Engelsburg①

パラレルトニペパです。

***
とある国の山奥にある古城には、昔から人間ではない者が住んでいるという噂だった。だが、誰もその姿を見た者はおらず、勇気ある若者が時折興味本位で城へと向かったが、誰一人として帰ってくることはなかった。男だけではない。周囲の村の若い娘が森に足を踏み入れると、煙に巻かれたように姿を消してしまうとも言い伝えられていた。
若者や村娘の失踪にはあの城が関係しているに違いないと考えた村人は、『悪魔の住む城』と呼び、いつしか山奥へと近づかなくなっていた。

時は移り…。
城の麓の村に、ヴァージニアという名の一人の少女が住んでいた。幼い頃に両親を亡くした彼女は村人の助けもありすくすくと成長していたが、心の底から信頼できる人間はおらず、彼女は一人ぼっちだった。何人もの男性が美しく成長した彼女に求婚したが、彼女の思いは違っていた。身寄りのない自分を可愛そうに思って求婚しているのだと捉えたのだ。
挙句の果てに彼女が村で一番苦手とする男性が求婚してきた。相手は金も名誉もある男。村人は良縁だと歓迎し、ヴァージニアの気持ちを聞こうともしなかった。
やはり自分は厄介者だと感じたヴァージニアは、ある日衝動的に森へと足を運んだ。

歩けども歩けども、周りの景色は変わらない。
どこをどう彷徨ったのか分からないが、次第に辺りは薄暗くなってきた。
「どうしよう…」
このまま進んでも深みに嵌っていく一方。一先ず休憩しようと、ヴァージニアは大きな木の下に腰を下ろした。
だが、こんな森の中なのだ。夜も更ければ自分を食らおうと獣が寄ってくるかもしれない。獣から身を守るためには、木に登った方がいいのだろうか…と、天高く伸びる大きな木を見上げた時だった。

「迷子か?」
突然人の声がし、ヴァージニアは飛び上がった。振り返ると、いつの間にか漆黒の馬に乗った一人の男性が背後に立っていた。暗くて顔は見えないが、男の周りは不穏な空気が漂っている。
もしかして噂の『悪魔の住む城』の城主かもしれない…。そうなれば、噂通り連れ去られてしまうだろう…。
男から逃げようと慌てて木に登ろうとしたヴァージニアだが、木登りなど生まれてこの方したことがないのだ。数十センチ登ったところで、足を滑らせた彼女は木から落ち、気を失ってしまった。

***

「ん…」
木から落ちたはずなのに、どこかに移動している。
ボンヤリとした頭では何も考えることができないが、ヴァージニアは大きく温かな腕に抱きしめられてるのに気づいた。
(温かい…すごく安心できるわ…)
無意識に男性の胸元に顔を擦り寄せたヴァージニアの耳に男性の声が聞こえてきた。
「おい!もうすぐ着くからな。頑張れ!」
焦ったような男性の声。そして必死に馬を走らせているのだろうか、男性の荒い息遣いを首元に感じたヴァージニアは再び目を閉じた。

②へ…

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