社長と秘書時代
「ペパロニピザのカルボナーラのせを頼む」
注文を取りに来た店員にさも当然のように告げたトニーだが、ペッパーは耳を疑った。なぜならそんな食べ方は一度も聞いたことがなかったから。
口をあんぐりと開けて自分を見つめている秘書に、トニーはご丁寧にもウインクをした。
「何だ?私がいい男だから見惚れているのか?」
「いいえ、違います。社長の注文されたピザですが、ペパロニピザとカルボナーラ、どちらも別々に食べられた方が…」
自分の好物を否定されたトニーは不機嫌そうに唸ったが、歴代秘書が彼女と同じ反応をしていたことを思い出すと、わざとらしく顎を突き出し鼻を鳴らした。
「ポッツくん、常識に囚われるな。料理はアートだ」
『アートな料理』には奇想天外な物もあるが、トニーの注文したぺパロニピザのカルボナーラのせも、その手の料理だと言いたいのだろうか。
「ですが…」
反論しようとしたペッパーだがタイミング悪く、件の料理が運ばれてした。
ぺパロニピザの上にカルボナーラがのせてある…とてもカロリーの高そうな料理なのに、トニーは手を叩き大喜びしている。
早速料理を頬張るトニーは心底幸せそうで、そんなトニーを見つめていたペッパーなのに、彼には物欲しそうな顔をしているように見えたのだろうか。
「食べるか?」
と、トニーは皿をペッパーに押しやった。
「いいえ、遠慮しておきます」
と断ったペッパーは、数年後には彼女も当然のように食するようになっているのだから、人生とは不思議なものである。