トニーがまた怪我をして帰ってきた。
アーマーを脱いだトニーの顔面は血だらけ。顔を何度も殴られたとのことだが、額の裂傷からは止めどなく出血しており、挙句の果てに口の中からも出血しているではないか。
顔中の血を綺麗に拭いとったペッパーはここでようやく気づいた。トニーの口元に違和感があることに…。
じーっと彼の顔を見つめたペッパーは原因に気がつくと、椅子から飛び上がった。
「トニー!!前歯が2本ないわ!」
青ざめたペッパーだが、今更何を…と、トニーはため息をついた。
「知ってる。折れたんだ。そんなに驚かないでくれ」
そう言いながらポケットから取り出したのは、折れた上の前歯。
「痛くないの?」
心配そうにしているのに、興味津々に歯をつついているペッパーにややムッとしたトニーだが、正直なところあちこちが痛み始めたため、何も言わず立ち上がった。
「痛いに決まってるだろ。しかも喋りにくい。何よりこんな歯抜けな顔では人前に出られない。一大事だ。だから早速歯医者に行ってくる」
さすがに血まみれの格好で行こうと思わないのだろう。一旦寝室へ向かったトニーはしばらくすると帽子にサングラスという姿で降りてきた。そして口元には夏にも関わらずマフラーを巻いているではないか。
季節感のない滑稽な格好に思わず吹き出しそうになったペッパーだが、本人は至って真剣なのだ。笑えばプライドが傷ついたと不貞腐れるのは目に見えている。
「行ってくる」
モゴモゴとくぐもった声を上げたトニーは、手を降るとガレージへと向かった。
背中を丸めしょんぼりと歩く後ろ姿は哀愁漂っており、なぜかペッパーの脳裏に診療台の上で震えるトニーの姿が浮かんだ。
(トニーは怖がってるわ!手を握っててあげなきゃ!)
病院は嫌いなトニーだが、別に歯医者が苦手な訳ではない。それなのにどうしてそんな姿が浮かんだのだろうか…。
「待って!ついて行ってあげるわ!」
ということで、カバンを掴んだペッパーは、慌ててトニーの後を追いかけた。
***これ以上は描写がリアルになりすぎるので割愛(笑)