1.君が居れば百人力

「何であいつがいないんだ」
目の前の敵は倒しても一向に数が減らない。いや、減らないばかりか、逆に増えている気がする。
数本の矢をまとめて射った俺は、背中に手を回すと小さく舌打ちした。
「おい、最後の1本じゃないか」
1本の矢で100体の敵を倒せというのだろうか…。
俺もここらで年貢の納め時か?
そんな考えが過り、軽く頭を振った時だった。
「手こずってるの?」
背後から聞こえてきたのは待ちわびたあいつの声。
途端に勝利の女神が俺に向かって微笑んだ。
「お前に見せ場を持たせてやろうと残してたんだ」
軽口を叩いてみたが、肩を竦めたあいつは、俺の背後に陣取った。
「6:4でどう?あんたが6で私が4」
「いいのか?俺が9でお前が1でもいいぞ?」
矢は1本しか残ってない。だからハッタリに決まってる。あいつの前ではカッコいい俺でいたいから。だけど居心地が悪くて俺は思わず鼻の頭を掻いた。
「何言ってるの?最後の1本なんでしょ?」
と言いながらあいつが差し出したのは、予備の矢筒。
つまり俺の窮地をあいつはお見通しって訳さ。
そうさ、あいつがいれば百人力。
だから俺にはお前が必要なんだ…。
(サンキュー)
声に出さずに口を動かすと、
「お礼は後でタップリもらうから」
と、あいつはニッコリと微笑んだ。

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