117. Rope

子供たちが犬を飼いたいと言い始めた。
実際のところ、私もペッパーも動物は好きだ。子供が生まれる前、短い間だったが子猫を飼っていたこともある。だが、子供たちが生まれ、4人の子育てとなると、なかなかペットを飼うことにまで気が回らなかったのも事実だ。

という訳で、早速我が家にオスの子犬がやって来た。
真っ黒のラブラドール・リトリバーの子犬は、ペッパーに真っ赤な首輪をつけてもらうと珍しそうにリビングを走り始めた。
「待って!」
その後を追いかけているのは双子。エストとエリオットは早速子犬の名前を考え始めた。
しばらく話し込んでいた二人だが、意見が一致したらしい。
「決めたわ。アリーよ」
「みんなの頭文字を取ったんだ。アビーのA、ルーカスのL、姉ちゃんのE、僕のEで、Alee」
得意げに発表するエストとエリオットに、ペッパーは感嘆の声を上げた。
「素敵な名前じゃない」
確かによく考えている。さすが我が子だと感心していると、双子が子犬とリードと共に戻って来た。
「パパ、ママ、おさんぽいっていい?」
「あぁ、ビーチに行こう」

子犬の首輪にリードを付けたのはいいが、子供たちはアリーの散歩のリードを誰が持つか揉め始めた。
なかなか終わらない議論に、足元に座ったアリーはくーんと恨めしそうな顔で私を見上げた。
「まぁ、待て。順番に持ったらどうだ?」
と、提案してみたが、今度は誰が最初にリードを持つか揉め始めた。つまり、誰しもが「一番最初」になりたいらしい。
だが、ここまでのアリーを観察していると、どうやらリードなしでも逃げ出す気配はなさそうだ。むしろロープで括り付けておきたいのは子供たちの方かもしれない。上の二人はともかく、下の双子は目を離すとあっという間に姿を消してしまうからだ。
そんなことを考えていると、アリーが催促するように私の足に縋り付いた。
そっと抱き上げると尻尾を振り回し、顔中を舐め始めた。
「あらあら、アリーはパパのことが大好きみたいね」
クスクスと笑ったペッパーは、アリーの頭を撫でた。
「まだ抱っこしてないのに!」
抗議するような子供たちの声を無視すると、アリーの首輪に付けたリードを持ち立ち上がった。
「揉めてる方が悪い。ほら、行くぞ」
まだ笑っているペッパーの手を取り外へ向かって歩き始めると、慌てふためいた子供たちは我先にと追いかけてきた。

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